2007 Fiscal Year Annual Research Report
近代ドイツにおける「学び」の変容に関する教育思想史的研究〜主知主義から錬成へ
Project/Area Number |
17530547
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 禎文 Tohoku University, 大学院・教育学研究科, 助教 (20235675)
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Keywords | 近代ドイツ / 教育思想史 / 1940年代 / ユダヤ人 / ワルシャワ・ゲットー / レーベンスボルン計画 / 優生学 / 生きるに値しない生命 |
Research Abstract |
本年度は3年計画の3年目にあたり、研究の総括を行った。近代ドイツにおける教育は、「国民」という概念の下に次第にその統合性を強めてきた。その中でいわゆる「国民」概念に照らして排斥された周辺的な人々-たとえばユダヤ人やジプシー、占領下におけるポーランド人、レーベンスボルン計画とその子どもたち、障害者(生きるに値しない生命)など-は、教育から排除されてきた。しかしそのような状況においても、なお教育的(あるいは福祉的)な営みが行われる余地は残されていた。今年度の研究においては、これまでの教育学研究において光を当てられることの少なかった人々の教育的経験に焦点を当て研究をおこなった。とくにワルシャワ・ゲットーにおけるユダヤ人の教育やレーベンスボルン計画によって産みだされた子どもたちの状況とその教育的な営為を中心として研究を進めてきた。 1940年代におけるワルシャワ・ゲットーにおいては、閉鎖された地域の中でユダヤ人教師たちが非合法ながらも教育活動を展開していたことが、奇跡的に残された複数の日記による証言を通して確認できる。 また優生学思想によって人種的に優れた形質を持つとされた北欧女性とナチ親衛隊との間で、第三帝国における将来のエリートたちの「計画的に増産」を目指したレーベンスボルン(生命の泉)計画は、ナチ支配の崩壊によって頓挫するが、子どもたちの教育に関して明確なビジョンを持っていた。 さらに「生きるに値しない生命」とされた障害者・障害児についても、限られた状況の中で教育的営為が行われていた。報告書においては、とくに1940年代、周辺的な位置に置かれた人々や子どもたちの教育について報告を行った。
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