2007 Fiscal Year Annual Research Report
1910-20年代東京市公立小学校における教育改造
Project/Area Number |
17530552
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
土方 苑子 Teikyo Heisei University, 現代ライフ学部, 教授 (50099909)
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Keywords | 新教育運動 / 公立小学校 / 新学校 / 教育方法 / 都市化 |
Research Abstract |
本年度はこの研究にとって3年目、最終年度に当たる。すでに昨年の実績報告書でも述べたように、本研究が最も重視していた生徒の個人情報を含む、都内公立小学校が保存している記録類の閲覧、収集という研究方法に対して小学校側が大変慎重な姿勢をとる状況が生まれている。即ち「個人情報保護法」が本研究のような実証的な研究に対して、阻害要因となる状況がうまれている。そこで本研究はすでに集めた史料の分析を中心としておこない、残念ながら当初計画した残存小学校の悉皆調査という面ではかなり変更を余儀なくされた。しかしすでに収集した史料類だけでも厖大であり、以下のような分析をおこない、1910年代以降の公立学校の学校改造の動きを従来に比べて相当詳しく描くと共に、新教育運動を理解する上でのいくつかの重要な論点を発見し、貢献をおこなった。 本研究の分析は主として次の3点についてなされた。まず収集した史料中、最も量が多く多様な史料を含んでいるお茶の水小学校(もと神田区錦華小学校)の史料を用いて、主として建築など教育をめぐる環境面に重点をおいて分析をおこなった。新教育の主要な着眼の一つが、児童の生活や環境への注目であるが、この学校では林間学校や様々な身体への働きかけが活発に行われるようになる過程をみてとることができる。特に最も総合的な領域として学校建築があると考え、関東大震災後に地域、父母との交流を踏まえ、教師や学校が計画段階から関わっておこなわれた小学校の復興問題を対象に考察をおこなった。第二に、小石川区林町小学校を取り上げる。貧民向けの無月謝の特殊小学校として発足した林町小学校は、障害者学級や、遅進児のための特別学級を1910年代から発足させ、公立小学校の概念から外れるほどの総合的な教育改革、学校改革をおこなった。他方で学校をとりまく地域は工業化の進行で大きく変化し、同校は特殊小学校であることをやめて、貧困者以外の生徒が中心となっていく。この過程も又、東京府内の授業改造の大きな流れと捉えたいと思う。第三に、収集した小学校日誌も相当量あるので、それらを悉皆調査してこのような動きを抽出することにした。以上をもって、個別研究2点、総合的な概要1点で構成される、報告書を提出する予定である。
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