2005 Fiscal Year Annual Research Report
スウェーデンにおける「教育的スロイド」の成立過程に関する実証的研究
Project/Area Number |
17530563
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横山 悦生 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 助教授 (40210629)
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Keywords | オットー・サロモン / スロイド / スロイド学校と国民学校の統合 / ネース・スロイド少年学校 / ウノ・シグネウス |
Research Abstract |
1.スウェーデンのストックホルムにある王立図書館とストックホルム教育大学図書館にあるスロイド教育史に関する資料を収集した。 2.収集した資料をもとに論文を2本執筆した。1本は「オットー・サロモンの初期スロイド教育--ネース・少年スロイド学校における実態の到達点からみたシグネウスの影響--」(日本産業教育学会)に掲載された(2006年1月)。他の1本は、「スウェーデンにおける1877年改革前後のスロイド学校の実態--オットー・サロモンの著書からみえてくるもの--」と題する論文で、これは『名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要(教育科学)』第52巻第2号に投稿し、現在印刷中である。前者の論文では、以下のことを明らかにした。1872年に創設されたネース・少年スロイド学校は、1874年に入学年齢を12〜13歳(国民学校修了後)から10〜11歳に下げ、国民学校としての性格をかねそなえたスロイド学校に変化した。1872年の創設直後のスロイド教育はヘムスロイドを教えていたが、その2年後の組織改革によって多くの普通教育科目が導入され、スロイド教育の目的は一般的な技能を獲得させることに転換した。本稿では、1872年から1876年までのサロモンのスロイド教育の実践の検討からサロモンがシグネウスと出会う1877年5月以前に普通教育としてのスロイド教育の理念を形成していたことを明らかにした。 後者の論文では、1870年代のスロイド学校の実態について、オットー・サロモンの『スロイド学校と国民学校』第1巻と第2巻に掲載されているスロイド学校の概要をもとに分析を加えて、以下のことを明らかにした。1.多くのスロイド学校は農村部に位置していた。しかも、かなり特定の地域に集中しており、とりわけスウェーデン南部に多かった。そのことはスロイド学校の問題は農村部の貧困農家の子弟の教育の問題とかかわっていたこと、その地域の農業経済会議所や地方議会のスロイド振興策とかかわっていたことを示している。 2.多くのスロイド学校は、国民学校と連携して(あるいは「統合され))設立されたのが、この時期に設立されたスロイド学校の特徴である。3.1870年代に創設されたほとんどのスロイド学校ではその目的は「職業人の養成ではなく、また、ヘムスロイドを教えることでもなく、一般的な技能を教えるという目的ををもっていた。4.1870年代の多くのスロイド学校は、主にスロイドだけを教える作業室と教師と施設・設備や材料、モデルや製作したものを保存する場所から構成される。大部分はスロイドの授業だけを行うための作業室を中心としたものであった。
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Research Products
(2 results)