2006 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスのリーディングエッジ・スクール(先端的革新学校)に関する比較教育学的研究
Project/Area Number |
17530614
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
望田 研吾 九州大学, 大学院人間環境学研究院, 教授 (70037050)
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Keywords | イギリス / 中等教育改革 / リーディングエッジ・スクール / 協働 |
Research Abstract |
本年度においては、以下のように研究を実施した。第1は、文献・資料の継続的収集と分析である。イギリスの中等教育改革関連、リーディングエッジ・スクール(Leading Edge School : LES)関連の文献・資料については、特に教育技能省や、今年からLES推進を担当することとなったSSAT(Specialist Schools & Academies Trust)が発行している文献・資料を収集・分析するとともに、関連文献を収集した。第2は、イギリス訪問調査の実施である。今年度は2回の訪問調査を行った。第1回は2006年9月26日から10月8日までの期間である。調査対象校は、ロンドンに近接しているブライトン、ピーターズバラにあるLES各1校、及びイングランド西部農村地域のコーンウォール州とデボン州にあるLES計3校である。学校訪問においては、校長、教頭、リーディングエッジ・パートナーシップ・プログラム(LEPP)担当者などへのインタビュー、関連資料の収集、授業観察を行った。これらの訪問調査では、前年度調査によって得られた協働を重視する教育文化の浸透が農村地域の学校においても強く見られる点が確認された。また、校長たちが協働を推進する上で、競争の要素を端的に表す現状のリーグ・テーブルに対して大きな不満を示していることが明らかとなった。さらに、競争的要素が強く残存する中で、協働と競争を「両立」させるために、遠く離れた学校と協働するという策をとっている学校もみられるなど、教育文化の競争から協働への移行に伴って苦心している状況も明らかとなった。第2回は2007年3月14日から25日までである。この調査においては、教育技能省担当官およびSSATのLEPP担当者へのインタビューと関連資料の収集をおこなうとともに、SSATが主催するEngaging Parents for Raising Achievement Conferenceに招待された出席した。この調査では、SSATが提唱する‘by schools and for schools'というスローガンに基づく‘school-led system leadership'の推進において、LEPPが重要な要素として位置づけられ、学校現場からの革新を促進するための主要なプログラムとして発展する可能性があることが、特にSSAT関係者へのインタビューと通じて明らかとなった。第3は、LEPPの学校における目的、そのプログラムの実態、問題点等の分析であり、教育技能省が提供しているLEPの自己評価に基づく詳細なデータベースが本年度に利用可能となったため、アンケート調査に代えてそれに基づく分析を行った。なお、特に協働と競争の矛盾等に関する校長等の意識については補足的なメールによる調査を実施することにしている。 以上の研究成果は「イギリスのリーディングエッジ・パートナーシップ・プログラムにおける協働」(『九州大学大学院教育学研究紀要』第9号,2007年3月)等において発表した。
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Research Products
(3 results)