Research Abstract |
数学教育における直観幾何と論証幾何の接続に関して,本年度,命題の全称性の認識に関する考察と,証明の学習の諸相に関する考察の2点に取り組み,次の成果を得た。 ● 全称性の認識に関する考察 学校数学図形領域において,実験・実測による命題の全称性の確立にかかわる生徒の認識をとらえる概念枠組みとして,5つの代表的様相(「イデア論idealism/目的論teleology」,「悲観論pessimism」,「楽観論optimism」,「現実主義actualism」,「素朴な予定調和naive pre-established harmony」)からなる四角錐モデルを構築した。そして,生徒の内的ゆらぎが顕著に現れやすい「現実主義actualism」と「素朴な予定調和naive pre-established harmony」)の間の中間的様相に着目し,質問紙調査の記述に基づいて,内的ゆらぎの実際の様子を考察した。 ● 証明の学習の諸相に関する考察 学校数学において証明を学習することに,次の3つの大局的な相があることを特定した:「証明を対象として学習する相」,「証明を活動として学習する相」,「証明の機能を学習する相」。特に,証明を対象として学習する相に,証明の構造的な側面に基づき4つの下位相を特定した。また,証明を活動として学習することには,問題場面,証明の構想,そして,証明の表現にかかわる活動として7つの下位相を特定した。証明の構造に含まれる相とその緩い順序性は,証明のしくみの学習指導において,どの時期に何を学習・指導するとよいのかという目安や指針となる。また,証明の諸活動に含まれる学習の相を整理したことにより,証明の構想を中心として学習活動を再構成する必要性が示唆された。
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