Research Abstract |
平成17年度の研究では,「CASを活用した代数的活動をとらえる枠組みの構築に向けた基礎的研究」に焦点をあてつつ,中学3年の選択数学での授業実践を通したCASを活用した代数的活動の考察を行った。代数的活動とは,代数的な考えを学習者が身につけることを促す学習活動や,代数的な考えを問題解決に活かす数学的活動を指す。また,代数的な考えとは,数学的表現を用いた記号化,正しいと認めた規則に基づく式変形などの活動,文脈とのつながりを自由にしていくことに伴う思考活動,式それ自体を対象や要素とみる抽象化と構造化などである。 「CASを活用した代数的活動をとらえる枠組み」の構築に向けて,Kieranの提唱する3つの代数的活動に着目した。Kieranによれば,学校数学における代数的活動には,生成(generational)の活動,変形(transformational)の活動,グローバルな内省(grobal-metalenel)の活動の3つのタイプがある。 例えば,1次方程式a(13+x)=45+xで解くことができる年齢算の問題で,定数aに該当する数値には規則性がある。xに該当する数値が人の年齢として適する場合を挙げると,定数aに該当する数は「32の約数+1」となる。これは,年齢差に1を加えたものである。もとの1次方程式を(a-1)(13+x)=(45+x)-(13+x)と変形し、その式の意味を解釈することや、分数関数Y=32/(x-1)の自然数値の意味を解釈することなどと「年齢差+1」は関連する。 ふりかえりを組織的に行う,異なる数学的表現間のつながりを図るなど,グローバルな内省の活動によって,深まりのある代数学習が行われる。Kieran, Stacy, DrijversらによるCASを活用した代数的活動,代数的洞察,理解の様相などの先行研究の分析を通し,CASの活用が「生成,変形,グローバルな内省」の諸活動を促進することが期待できる。本年度は,Kieranによる3つの代数的活動を軸に,ここに「習得と整理」「探求と発見」という2つの学習の様相を表す視点を入れ,枠組みの試案と具体例を検討した。平成18年度においては,Kieranによるグローバルな内省の活動に焦点をあて,メタ認知やCASの活用に関わる先行研究との関連性を示しながら,そのメカニズムを解明したい。 同時に,具体例の開発を通して,代数的活動をとらえる枠組みづくりを一層進める予定である。
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