2006 Fiscal Year Annual Research Report
ストーリー・マンガの作品を利用した、異文化間理解教育の教材とプログラムの開発
Project/Area Number |
17530666
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
因 京子 九州大学, 留学生センター, 助教授 (60217239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 瑞子 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (80156463)
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Keywords | ストーリー・マンガ / 異文化間理解 / 発話の解釈 / 文脈 / 文化的価値観 / 事象の両義性 / 文体的特徴 / 有標・無標 |
Research Abstract |
(1)学習困難点の研究:学習者のストーリー・マンガ解釈の例から日本語非母語話者にとって理解が難しいと考えられる点として、以下を抽出した:1)言語形式の用法に関わるもの:実質的意味を表さない文体上の形式の区別が文脈の中で帯びる意味、2)言語行動に関わるもの:意図的に否定的な言語行動を志向する動機の解釈。具体的には、「丁寧体と普通体の使用、及び、文脈におけるそれらの交替の意味」「ジェンダー表示表現使用及び不使用の意味」「有標表現の認識と解釈」「親切を攻撃と偽装する意図」「露悪的行動の意図」「上位者による露悪的行動と下位者の同調の意図」などが、上級や超級と呼べるレベルに達した学習者であっても誤解する可能性が高いことが判明し、これらの点に関しては初級の導入とは別の明示的な提示が中級以降の段階で必要であることが示唆された。 (2)理論的研究:(1)であげた特徴のうち言語形式について、それらが文脈の中で機能するメカニズムと効果をポライトネスの観点、及び、自己表現の観点から、理論的に説明することを試み、学習者の解釈の失敗の原因がどこに由来するかを考察した。学習者が理解に失敗する根本原因として、同一の事象が「親和的」「攻撃的」のどちらの動機に基づいているかによって効果が大きく異なるという事実への認識が欠如していること、また、何が「無標」であるかは、話者によって異なることへの認識が欠如していることがあげられる。 (3)調査:教育プログラムの中心課題の妥当性についての広範な調査を行うことを目的として、ストーリー・マンガ、小説、実際の母語話者による発話例などから、ターゲットとする現象を含む場面を抽出してテストを作成し、上級学習者12名を対象に予備調査を行った。 (4)研究成果の発表:論文発表のほかに、上級学習者の持つ問題点とその対処法について、米国・中華人民共和国で口頭発表を行った。更に、韓国日本語学会から招待を受け、文化的要素を取り入れるためにストーリー・マンガを用いる教育方法について基調講演を行なった。
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Research Products
(4 results)