Research Abstract |
本研究課題の大きな目標の1つに,一般モデュラー関係式の確立がある.IJNTより出版された論文では,一般processing gamma因子を持つものを,数論においてよく現れる形に合わせ,使いやすいように整備した.また従来よく知られていたコシリャコフ,バーント,ヴィッガート-ベルマンらの結果を,われわれの一般モデュラー関係式の立場から見直すことも行った.現在,当研究課題の集大成として,H-関数を用いて,極限まで一般化したモデュラー関係式の理論の本を,研究分担者の金光滋,塚田春雄両氏と共に執筆中である.上の研究内容は,その一部として本の中に取り入れる予定である. オイラー-ザギヤー型の多重ゼータ関数の解析的性質も本研究課題の一つである.特に2重ゼータ関数の虚軸方向の大きさについて研究を行った.従来知られていた結果は,石川秀明-松本耕二氏らによるζ_2(it,iαt)≪|t|^<3/2+ε>であったが,われわれはゼータ関数の有限和による近似の誤差項の精密化,クラッツェルの二重指数和の理論,二重ワイル変換等を用いて,ζ_2(it_1,it_2)≪|t_1|^<1+ε>,(|t_1|〓|t_2|)を得、彼らの結果を大幅に改良することができた.同時にζ_2(s_1,s_2),0【less than or equal】Res_j<1についても満足できる評価を得た.この研究は,Ann.Scuola Norm.Sup.Pisaから出版された.また2006年12月にHarish Chandra Research Instituteにおいて開催された整数論の国際会議でこの結果を発表し好評を得た.3重ゼータ関数についても同様の研究をし,たとえばζ_3(it_1,it_2,it_3)≪|t_1|^<2+ε>(ただしt_jは同じオーダーをもつもの)を得た.その論文は現在投稿中である.ζ_2(s_1,s_2)はアトキンソンの研究で明らかにされたように,リーマンゼータ関数の平均値の研究に非常に有用であり,更なる研究によって応用が期待できる.
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