Research Abstract |
差集合や相対差集合(relative difference set)はアーベル群のときを中心に研究が行われている.非アーベル群のなかでも非可解群については伊藤昇によるSL(2,5)のなかの(60,2,60,30)-相対差集合の発見が知られている.これを利用すれば,非可解群であるSL(2,5)の有限個の中心積Gにも相対差集合が存在することになる.このGを中心で割ると単純群である5次交代群A5の有限個の直積であるが,それでは5次交代群自身は相対差集合を持つのかという疑問が自然に生じる.これまでは,相対差集合にせよ,もっと古くから研究されている差集合にせよ単純群のなかにはその存在が知られていなかった.本年度行った研究は相対差集合に関する結果が非アーベル群,とりわけ単純群の場合にどの程度成り立つのかということについて分析することを目標の一つとした.その試みとして,まず最小位数の単純群である5次交代群のなかの相対差集合について調べた.その結果,相対差集合が2種類実際に存在することが分かった.その方法はまず,有限幾何的手法を用いて,SL(2,5)のなかにaffine difference setを構成してその準同型像により5次交代群のなかに異なる2種類の非自明な相対差集合を実際に構成した.次に,これがすべてであることを示すために5次交代群のなかの可能な相対差集合のparametersをすべて調べ上げて,代数的に矛盾が出るものを除いた.残りのものについては代数的条件をつめていくことにより,最終的には数式処理ソフトGAPを用いてコンピュータにより同値なものを同一視すればこの2種類しかないことを示した.これは,他の単純群のなかにも差集合が存在しうることに根拠与えたことで意味があるのではないかと思う.また,単純群の中の相対差集合の最初の発見としての価値もあるものと考える.研究成果を具体的に述べれば次の通りである. 定理5次交代群に含まれる非自明な(m,u,k,λ)-相対差集合は同値なものを度外視してちょう2種類存在し,それはどちらもアフィン型相対差集合であり,parametersは(m,u,k,λ)=(12,5,11,2),(30,2,29,14)である.
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