Research Abstract |
連分数展開の理論で最も基礎的なものは,Lagrangeの定理と呼ばれるもので,実数の正則連分数展開はその実数が2次の無理数ならば必ず循環するというものである。この理論は,連分数展開を2次の無理関数に拡張した場合,基本体が有限体ならば,成り立つことがArtinによって示された。 連分数展開とPell方程式の関係は,古くから知られており,私たちの研究テーマの1つである多項式Pell方程式の解の構造の解明には,有理数体上での連分数展開を用いる必要がある。そこで,有理数体上での連分数展開について研究を行っていたところ,有理数体上では,循環でない正則連分数展開が存在するのではという推測に至り,昨年の4月から解明を行ってきた。 その結果,2次の無理関数x/√<x^2+ux+v>は,u,vがある条件を満たすとき,その連分数展開は循環しないことを示すことができ,現在,論文の投稿の準備をしている. また,この結果がもっと単純な無理関数√<x^4+ax^3+bx^2+cx+d>でも成り立つのかという問題が生じた。私たちのこれまでの研究でD=x^4+ax^3+bx^2+cx+d=A^2+2C,ただしA/C∈Z[x]の場合は,連分数展開は周期2で循環することが分かっている。そこで,循環するのではという視点に立って,まず,周期3の循環があるのかを調べた。その結果,無理関数√<x^4+ax^3+bx^2+cx+d>はどんなa,b,c,dでも周期3で循環することは無いことを証明することができた。一方,コンピュータを用いて循環する場合があるかを調べるため,プログラムを作成し,プログラムを走らせたところ,周期4,6,10の場合があることが分かった。これらは,全て偶数の場合であり,奇数の周期を持つ場合は無いのではと推測に至り,来年度はこのことを含めて解明していく。
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