Research Abstract |
位置尺度母数を持つ確率変数列に対して,正則な場合,位置母数の最尤推定量θ_nと尺度母数ξの最尤推定量が漸近的に独立ならば,区間幅2d(>0)をもつ信頼係数1-αのθ_nに基づく逐次信頼区間[θ_τ-d,θ_τ+d]を構成できることが知られている.ここでτは標本の大きさで,ある停止則により決まる.本研究では,非正則な分布として,有界な台を持つ位置尺度母数を持つ確率分布を考えた.平成18年度にはξが未知の場合に位置母数の逐次信頼区間を構成したが,今年度は,通常の2乗損失に加えて標本抽出の費用も考慮したリスク関数を考えて,ξが未知の場合に位置母数の逐次点推定方式を構成した. いま,標本抽出の費用をdとし,標本の大きさがnのときのミッドレンジとレンジを,それぞれM_n,R_nとし,停止則をτ:=min{n〓n_0:n^3〓AR^2_n/(2a^2d)}とおく.ただし,2aを確率分布の台の幅,n_0をある条件を満たす初期標本数,Aをある正定数とする.M_nを用いて位置母数の点推定を行う.いま,n^*をξが既知のときの漸近的必要最小標本数,r_nを標本数がnのときのリスク関数とすると次を得る. (i) lim_<d→0+> τ/n^*=1, (ii) lim_<d→0+> E(τ/n^*)=1, (iii) lim_<d→0+> r_τ/r_<n^*>=1. 従って,この推定方式は漸近有効性などの優れた性質を持つことが分かる.また,良く知られているRobbinsの逐次点推定方式と比較しても,標本の大きさは確率1で有界になり(Robbinsの逐次点推定方式の場合は標本の大きさが有界にならない),良い性質を持っていることが分かる.さらに,Robbinsの逐次点推定方式との漸近標本数の比較を行い,密度関数の台の端点で密度関数の値が急激に変化する確率分布の場合には,新しく提案した逐次点推定方式がRobbinsの逐次点推定方式よりも標本数の意味で優れていることを示した.このことは,非逐次の場合における一致推定量の収束の次数に関する結果(Akahira and Takeuchi(1995), Koike(2007))と同様の結果となっている.
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