Research Abstract |
1.懸案の問題である,単位円板上の有界解析関数空間における合成作用素については,それら作用素の有限個の一次結合のcompact性,essential normの評価に取り組んだ.comapact性については完全に特徴づけ,norm評価については係数が正の場合のときの成果を得たが,新潟大学の泉池敬司教授も加わっての共同研究で,係数の実部が正の場合に拡張でき,関連する問題も浮き彫りにされた.この結果は論文として投稿した.作用素論の研究者にとっては,むしろ作用素の「和」に興味があることが知られているので,一次結合についての研究はC*環,作用素環への新たな展開が予想される. 2.Dunford-Pettis性質,tight環,Bourgain環に関係するなど重要な応用面を多く持っているHankel-typeについては,Hardy, Bergmanの空間におけるcompact性,weak compact性,complete continuityの研究を行った.その結果は本研究課題に連動する形で申し込み,採用された京都大学数理解析研究所共同研究「Analytic Function Spaces and Their Operators」(18年6月開催)で発表した.この共同研究集会は日本,韓国,中国からの研究者を招き,この分野の諸問題を論じ合う目的で開催した.その旅費の一部を本件より捻出したが,参加者より継続的な開催を望まれた. 3.本研究課題の研究協力者である細川卓也と,Bloch空間上の合成作用素のcomponentをcompact性で特徴づけ,位相構造を考察したが,差のcompact性についての結果も,投稿し受理された.また.19年2月にフィンランドから招いたPekka Nieminen(ヘルシンキ大)とのセミナーにより,Bloch空間における合成作用素の一次結合の挙動について,共同研究をスタートさせることとなった.氏とは,かねてより我々がBloch空間上の合成作用素を考える際使った道具であるhyperbolic derivativeについての交流をもっていた. 4.次元の違うHardy, Bergman空間間の合成作用素の挙動について,K.Zhu(SUNY)らを始めとした研究者が考察しているが,値域が1次元Hardy空間の場合が未解決であった.この特徴付けは荷重合成作用素の問題と関わっていることが判明,考察を開始した.
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