Research Abstract |
前年度に引き続き,境界観測・境界制御機構をもつ線形放物系における安定化フィードバック制御論,および関連する特別な非線形問題についての研究を行った. (1)有限次元補償器を経由せず,境界観測値を直接境界にフィードバックする単純な機構(static feedback)による安定化論を構築した.この問題は,20数年間未解決の問題として注目されている.ゲインパラメター:γを導入し,対応する楕円型作用素における2つの有限次元,無限次元部分構造の整合性の研究を行い,可観測性,可制御性の仮定のもとで,現れる半群の一般的代数分解定理(general factorization theorem)を証明することにより,安定化を達成した. 不安定スペクトラムに対するある種の代数的拘束条件を仮定しないと,(γに関する)系の内部特異性が生じる.この代数的拘束条件の除去については,対象となる相異なる固有値の数nが大きくない場合には,その多重度に依らずこの制御則が特異性を代数的に解消すること(cancellation)を示し,またこの解消が一般の次元で成立する予想(conjecture)を立てた. (2)有限次元補償器(有限次元線形微分方程式系)をフィードバックループに組み込んだ制御機構による安定化論は,前年度の研究によりほぼ完成に至った.今年度は,その出力を含む状態の汎関数(functional)についての研究を推進した.状態が安定化されれば,その汎関数も同じ減衰率で安定化されるのは(たとえ境界出力のように非有界であっても)当然である.本研究では,汎関数が状態そのものよりも早い減衰率で減衰するような特別なフィードバック制御系の存在定理とその具体的構築に成功した.その構築の過程で,「拘束条件つき極配置」という新しい問題に遭遇した.制御理論における極配置問題は,丁度40年前にW.M.Wonhamにより完全な解答が得られている.ところが本研究では,拘束条件を伴う新しい極配置問題が現れた.ある制御系に対応する拘束付き極配置が任意に可能であるための必要かつ十分条件を,極めて複雑な代数的考察を経由して求めた. (3)特異外力項をもつ楕円型方程式の大域解の存在・非存在および多重存在について考察を行った.また,Sobolev臨界指数増大度の非線形項を持つ半線形放物系の解の爆発の速さについて考察を行い,とくに後方型自己相似解の構造を明らかにすることによりtype IIと呼ばれる特異な速さで爆発する解の存在について論じた.
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