Research Abstract |
境界観測・境界制御機構をもつ線形放物系における安定化フィードバック制御論,および関連する特別な非線形問題についての研究を行った. (1)有限次元補償器を経由せず,境界観測値を直接境界にフィードバックする単純な機構(staticfeedback)による安定化論を構築した.この問題は20数年前から本質的発展がないという意味において,注目されている.ゲインパラメター:γを導入し,対応する椎円型作用素における2つの有限次元,無限次元部分構造の整合性の研究を行い,可観測性,可制御性の仮定のもとで,現れる半群の一般的代数分解定理を証明することにより,安定化を達成した.不安定スペクトラムに対するある種の代数的拘束条件を仮定しないと,(γに関する)系の内部特異性が生じる.この代数的拘束条件の除去については,対象となる相異なる固有値の数nが大きくない場合には,その多重度に依らずこの制御則が特異性を代数的に解消することを示した. (2)物理的実現可能な有限次元補償器を組み込むフィードバック制御機構による安定化論において,新たにその出力を含む状態の汎関数のダイナミクスを含めた複雑系としての研究を推進した.本研究では,汎関数が状態そのものよりも早い減衰率で減衰するような特別なフィードバック制御系の存在定理とその具体的構築に成功した.一般のpdeでは,直交する固有関数がそのような特性を有するが,制御系においては直交する固有関数は一般には得られない.その意味で,特別な汎関数の構築の意義は大きい.また制御系構築の過程で,拘束条件つきの極再配置という新しい問題に遭遇した.制御理論における極再配置問題は,1967年にW.M.Wonhamにより解答が得られた.本研究では,拘束条件を伴う新しい極再配置問題を研究し,制御系に対応する拘束付き極再配置が任意に可能であるための必要十分条件を,多項式に関わる複雑な代数的考察を経由して求めた.また,固有値が退化する場合に,その一般化を試みた.次元が低くても計算量は膨大ではあるが,5×5行列が現れる場合には,一般化が可能であることを示した(現在,投稿中) (3)クラミジア性感染症の数理疫学モデルの解析に先だって,同感染症より伝播が穏やかなヒト成人T細胞白血病の数理疫学モデルについて,微分方程式論,差分方程式論および確率論を基礎とした方法により研究を行った.先行研究では感染者の母集団動態に関する数理疫学としてキャリアが時間の中で消滅,あるいは存続できる条件をまとめているが,日本の現在の生活環境ではキャリアは減少し,約100年でキャリアが消滅することを計算機ミュレーションにおいて示した.
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