2005 Fiscal Year Annual Research Report
南極周回バルーンによる宇宙線原子核観測データの解析
Project/Area Number |
17540226
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
市村 雅一 弘前大学, 理工学部, 助教授 (20232415)
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Keywords | 宇宙線原子核 / 長時間気球 / 遷移放射 / エネルギースペクトル |
Research Abstract |
本研究の物理目標は、長時間気球を用いた宇宙線原子核の観測データから、銀河宇宙線の加速・伝播機構に関する情報を得ることである。具体的にはシカゴ大学が中心となって行っているTRACER実験に共同研究者として参加し、そのデータ解析を行って様々な原子核の絶対強度スペクトルを算出することが当面の目標である。本年度は2003年12月に南極で行われた長時間観測のデータ解析を主に行った。 TRACER実験で用いている検出器には、入射粒子の電離損失を検出するプラスチックシンチレータ、チェレンコフ光を検出するチェレンコフカウンタ、座標と電離の測定を同時に行うための比例計数管、遷移放射検出器などが層状に組み込まれている。解析ではまず合計1600本に及ぶ比例計数管のシグナルから入射粒子の飛跡を再構成する作業を行った。これにより約2千万例の宇宙線粒子を検出した。次に検出されたそれぞれの粒子について、同時に検出されているチェレンコフとシンチレータのシグナルから電荷を決定した。また、粒子のエネルギーは、1)1GeV領域についてはチェレンコフシグナルから、2)数10〜数100GeV領域では電離損失の相対論的増加から、3)400GeV〜については遷移放射シグナルからそれぞれ測定し、10^<14>eV領域でのエネルギースペクトルを過去に例のない統計精度で算出することに成功した。またシミュレーションによって検出効率の補正も行い、最終的に酸素核〜鉄核の絶対強度スペクトルを求め、簡単な宇宙線伝播モデルとの比較を行った。 TRACERグループでは更に改良を加えた検出器を用いて、次回の長時間観測を2006年5月にスウェーデンで行うことを計画している。来年度は新たに得られるデータを加えて、宇宙線の加速限界と思われている領域までエネルギースペクトルを伸ばしていく予定である。
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Research Products
(4 results)