2007 Fiscal Year Annual Research Report
3フレーバーの動的クォーク効果を取り入れたシミュレーションによる格子QCDの研究
Project/Area Number |
17540259
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大川 正典 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 教授 (00168874)
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Keywords | 格子QCD / 動的クォーク / 3フレーバー |
Research Abstract |
強い相互作用の定量的研究は素粒子物理学の重要な課題であり、格子量子色力学(格子QCD)の数値シミュレーションによって行うことができる。自然界には、uクォーク、dクォーク、sクォークというフレーバーの違う3種類(3フレーバー)の軽いクォークが存在し、これらのクォークの真空偏極の効果(動的クォーク効果)が重要と考えられている。動的クォーク効果を取り入れた格子QCDのシミュレーションの計算には膨大な時間がかかり、その計算時間はクォーク質量の3乗に反比例する。sクォークの質量は約80MeVであり、この質量でのシミュレーションはすでにできている。しかしuクォークとdクォークの質量は約5MeVと非常に小さく、現実のu,dクォーク質量でのシミュレーションはまだできていない。我々は昨年度まで、u,dクォーク質量を約50MeVから約120MeVまで変えたシミュレーションを行い、ハドロン質量等の物理量の計算結果をu,dクォーク質量に対して外挿し、現実のクォーク質量での値を求める研究をしてきた。本年度は、u,dクォーク質量の外挿による系統誤差を小さくするために、従来用いられてきたハイブリッドモンテカルロ計算法を改良し、より軽いクォーク質量での研究をした。計算法の改良には領域分割前処理法を用い、計算時間を大幅に短縮することができた。この新しい計算法を用い、u,dクォーク質量が約10MeVから約50MeVまでのシミュレーションを行った。シミュレーションの結果、π中間子の質量や崩壊定数のu,dクォーク質量依存性はカイラル摂動論と矛盾しないことが分かり、これらの物理量の外挿精度が上がった。今後も新しい計算法の開発を進め、現実のu,dクォーク質量である約5MeVでのシミュレーションをめざす。
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