2006 Fiscal Year Annual Research Report
半古典的歪曲波法による中間子生成反応の記述と素過程の核媒質効果
Project/Area Number |
17540263
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
河野 通郎 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40234710)
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Keywords | ハドロン物理 / 半古典的歪曲派近似 / 包括反応スペクトル / Σハイペロン / ΣN相互作用 / η中間子 / Ξハイペロン / 低運動量空間等価相互作用 |
Research Abstract |
π中間子、K中間子そして光子を原子核に入射させて得られる中間子生成強度の解析を通じて原子核中のハドロンの性質を明らかにすることを目的として、標的原子核の適切な記述、入射ハドロンおよび終状態の波動関数の記述、多体相関・多段階過程の寄与の考慮、そして原子核内の核子の運動を考慮した素過程の重心系への移行、などを適切に扱うことのできる記述法である半古典的歪曲波法をこの数年間開発し、その有効性を確かめてきたが、今年度は、(π^-,K^+)Σハイペロン生成包括反応スペクトルの解析の集大成となる論文を発表した。この中で、実験的に得られているΣ生成スペクトルが、Σハイペロンの一体ポテンシャルが斥力的であることの根拠を与えることを示した。この方法を、(γ,η)スペクトルや(K^-,K^+)Ξハイペロン生包括反応スペクトルに適用し、η中間子が強く結合する中間状態のS_<11>共鳴の核内での性質やΞハイペロンの一体ポテンシャルに関する情報を得る解析を引き続き行った。現在、模型の精密化のために、標的核の重心運動の取り扱い方法や放出粒子をGreen関数で記述する方法の導入などの課題を検討している。 ハイペロンの一体ポテンシャルの性質を、ハイペロン-核子2体相互作用の性質に関連付けるためには、原子核における有効相互作用理論を用いなければならない。伝統的な手法であるG-行列理論に加え、近年、高運動量成分を別の処方で繰り込む低運動量空間等価相互作用を核内有効相互作用として用いる方法が開拓されている。その方法をハイペロン-核子相互作用に対して適用し、いろいろな部分波の等価相互作用を求め、種々のポテンシャル模型が与える2体相互作用の性質を調べる研究を並行して行った。クォーク描像に基づく模型の場合、Σハイペロン-核子間のクォークレベルでのパウリ原理に起因する比較的長距離の斥力が、Σハイペロンの一体ポテンシャルを斥力的にするのに大きな役割を果たすことを具体的に示した。また、いろいろなバリオン結合の効果が有効相互作用にどのような効果を与えるかについても、見やすい形で提示することが可能になった。
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Research Products
(2 results)