2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17540293
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上羽 牧夫 名古屋大学, 大学院理学研究科, 教授 (30183213)
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Keywords | 結晶成長 / カイラル対称性 / 光学異性体 / 結晶表面 / ステップ / 弾性相互作用 / クラスター / 核生成 |
Research Abstract |
1)粉砕攪拌条件で結晶のカイラル対称性の完全な破れが実現できるとする実験の機構の解明や,工学的な見地から注目されている添加物による光学異性体の分別の問題の定量的な解明のためには,クラスターサイズ分布の変化について明確な理解が必要である.そこで原理的に核生成の初期から熟成までを統一的に扱うことのできるBecker-Doeringモデルでのクラスターの成長過程を初期から後期まで追うことを試みた.しかし,そのような既成の理論はなく,結晶の核生成からOstwald熟成までの極端なサイズの違いを考えると直接的な数値計算も困難である.そこで数値計算が何とか可能な,極端に過飽和度が大きい場合のBecker-Doeringモデルでの数値シミュレーションを行い,その結果の考察から,極端に自由度を減らした簡単なモデルを作った.これによって単分子密度の時間変化が簡単に計算でき,数値計算の様子をある程度定量的に再現することができた.このモデルがよければ,数値計算が不可能な低下飽和度の場合にも系の時間発展を予想できることになる.現在詳細な理論的検討を行っている. 2)結晶表面の拡散の等方性が破れたSi(001)面はその微斜面に拡散容易軸が90度交代するテラスが現れる.この微斜面の通電によるバンチングにおいて,ステップ束の成長速度が,ステップの蛇行による束の組み換え促進という2次元効果で,1次元的な場合と逆転すること,電流の向きによって束から分離したステップ対の進行方向が反転することなどがわかった. 3)ヘテロエピタキシャル成長においては,しばしば吸着物結晶格子の並進対称性を破るかたちでミスフィット転位が導入される.転位を含んだ2次元格子モデルを構築することで,転位間相互作用の詳細と転位間の最適距離を決めることができた.このとき転位芯近傍の力の分布がプラス-マイナスとマイナス-プラスの転位配置についての対称性を破ることを具体的に示した.また吸着原子位置を決める定性的な指針を与えた.このモデルを使い連続体理論では扱えない,表面に島ができる場合などの研究を進め,成長モードの予想を行っている. 4)異方性の強いSi(110)面のエッチングで,表面の粗さが時間に比例して増大するという珍しい現象がある.溶液中の拡散場の非一様性とエッチャント濃度依存性の反転を仮定すれば,界面不安定化としてこれが説明しうることを示した.
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Research Products
(6 results)