2007 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー電子線励起による半導体表面構造の不安定性
Project/Area Number |
17540295
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金崎 順一 Osaka University, 産業科学研究所, 准教授 (80204535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷村 克己 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00135328)
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Keywords | 半導体表面 / キャリア注入 / トンネル顕微鏡 / 電子的結合切断 / 構造変化 / 非線形局在 |
Research Abstract |
トンネル顕微鏡(STM)探針から電子あるいは正孔を制御して注入し、キャリア注入前後の表面構造をSTM観察することにより、電子励起による半導体表面構造の不安定化に関与する励起種について直接的知見を得た。InPウェハーを超高真空中においてへき開し、欠陥濃度のきわめて低いInP(110)-(1x1)表面を準備した。いくつかの異なるサンプルバイアスにおいてトンネル電流値を調整し、定電流モードでSTM探針を走査して試料表面へのキャリア注入を行った結果、正孔注入において、表面P-原子サイトに空格子が生成されることが明らかとなった。重要な特徴は、発生する空格子点の形態が試料のフェルミ準位に強く依存することである。p型試料の場合、monovacancyが主要な生成物であるのに対して、n型試料では、連続走査により、空格子点クラスターへの成長が効率的に起こった。このようなフェルミ準位の違いによる構造変化の形態的特徴は、レーザー光励起の場合にも同様に観測されることが報告されている。表面空格子点が、n-typeでは負に、p-typeでは正に帯電していることを考慮すると、観測された構造変化形態の特徴は、注入正孔と生成された空格子点との静電的相互作用により合理的に説明することができる。 空格子点生成の効率は、サンプルバイアス(Vs)及びトンネル電流値(It)に強く依存する。p-type試料の場合、Vs、<-2.5Vのサンプルバイアスで空格子点生成が明確に観測され、-4.0Vまでその効率は増大する。また、効率はItのほぼ2乗に比例して増大することがわかった。これら効率のエネルギー及び励起密度依存性の結果は、InP(110)の表面占有状態バンドへの注入正孔の非線形局在に起因する結合切断モデルにより整合性よく説明することが可能である。
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Research Products
(9 results)