2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17540298
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
伊東 千尋 和歌山大学, システム工学部, 教授 (60211744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木田 浩嗣 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (30186275)
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Keywords | 光キャリア / フェムト秒レーザ励起発光測定 / 交流光伝導測定 / チタン酸ストロンチウム / アナターゼ型二酸化チタン |
Research Abstract |
1.フェムト秒レーザ励起によるSrTiO_3結晶の再結合発光測定 SrTiO_3結晶の光キャリアの再結合ダイナミクスを明らかにするためにフェムト秒レーザ励起発光測定を行った。これまでの研究結果から、SrTiO_3結晶の光キャリアは自由状態にあることが判っている。一般的にこのような結晶では、励起源に連続光あるいは長パルスレーザを用いると、キャリアの捕獲により不純物や格子欠陥の励起状態が形成される。このため、これらに由来する発光が固有発光に重なり、そのスペクトルと減衰は複雑化してしまう。従来、SrTiO_3結晶を基礎励起することによって生じる再結合発光は、非指数関数的減衰を示すとされている。しかしながら、従来の研究では、励起源として連続光源あるいはナノ秒パルスレーザが用いられており、非指数関数的な減衰を示す成分が固有の発光であるか、外因的な発光であるかは明確ではなかった。 上記の点を明らかにするために、100fsのパルス幅を持つフェムト秒レーザポンプ光(λ=800nm)の二光子励起により誘起される発光の測定を行った。T=10Kにおいて、発光スペクトルは2.36eVにピークを持つ単一ガウス型であった。T=40K以上で発光強度は急激に減少し、2.7eVにピークを持つガウス型のスペクトルが重なったものへと変化した。T=30Kでの発光減衰はt^<-0.8>に比例する非指数関数的減衰を示す成分と、寿命130μsで指数関数的に減衰する成分の和で説明することができる。一方、T=46Kでは、t^<-0.8>に比例する非指数関数的減衰を示すことを見出した。従来、SrTiO_3結晶の発光スペクトルは低温においても、非指数関数的減衰を示すとされていたが、得られた結果はこれとは異なる。この結果は、自由状態にある光キャリアの拡散が再結合発光の減衰過程に大きく影響していることを示す 2.二酸化チタン結晶における光キャリアダイナミクスの研究 アナターゼ型に酸化チタンのキャリアの性質を明らかにする為に、光照射下における交流伝導度測定を室温で行った。この結果、アナターゼ型酸化チタンの光電流には、電場周波数(f)に依存しないDC成分とf^<0.7>に比例して増加する成分の二つからなることが判った。これら二つの成分について励起スペクトルを測定したところ、周波数に依存する成分はバンド端(3.2eV)で鋭い立ち上がりを示すが、DC成分はバンドギャップ以上で徐々に強度を増し、3.8eV付近にピークを持つことが判った。この結果は、アナターゼ型酸化チタンを基礎励起すると、バンドキャリアとポーラロンが形成されることを示し、ポーラロンの収量はバンド端付近で高く、バンドキャリアはバンド端よりも高エネルギー側で効率よく形成されることを示す。
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Research Products
(2 results)