2005 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導・超流動体における、時間反転対称性をもつ量子渦の理論
Project/Area Number |
17540314
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 雄介 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (20261547)
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Keywords | 超伝導 / 渦糸 / 準古典近似 / 電子状態 / ピン止め / 異方的超伝導 / 局所状態密度 / STM |
Research Abstract |
銅酸化物超伝導体は、2次元系が積み重なって層状構造をなしている。その層に垂直な方向(C軸方向)に、多数の柱状欠陥を重イオン照射によって打ち込むと隣り合う層の間の相関が磁場の関数として非単調な振る舞いをする。層間の相関が強ければ系は3次元的に振る舞い、相関が切れれば各層は独立になり、系は2次元的に振舞う。この現象の最も興味深い点は、柱状欠陥の本数と渦糸の本数の比が3:1になるときにリエントラントが起こる点にある。次元性のリエントラント現象が不連続転移かクロスオーバーかは実験的には決着していない。一方、モンテカルロシミュレーション(R.Sugano et al PRL{bf 80}(1998)2925-2928)によれば、柱状欠陥と渦糸の本数比が3:1付近でたしかにC軸方向の相関が不連続に変化し、次元性のリエントランスが起こることが示されている。さらに不連続転移が各層内における渦糸のピンニング・デピニングの不連続転移によるものだと解釈している。われわれは菅野理論を批判的に検証し、ピニング・デピニング転移は2次元系、3次元系ともに存在しないこと、次元性のリエントラントはクロスオーバーであることをモンテカルロ法による数値計算で示した. また異方的超伝導体の渦糸状態における局所状態密度の解析理論を構築し、渦糸のまわりの電子状態の空間パターンと、k空間におけるペア波動関数の異方性との関連を明らかにした。NbSe2,YNiBC,CePt3Siに応用し、走査型トンネル顕微鏡による実空間の観察が、ペア相互作用の対称性を決定する上で重要なツールになり得ることを示した点に意義がある.また局所状態密度に関する従来の理論は数値計算によるものだったのに対して、われわれの方法は準古典運動方程式の可積分性を用いる解析的な手法であり、フェルミ面の異方性を取り入れることも可能な拡張性に、手法としての意義がある。
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Research Products
(1 results)