2007 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導・超流動体における、時間反転対称性をもつ量子渦の理論
Project/Area Number |
17540314
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 雄介 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (20261547)
|
Keywords | 超伝導 / 渦糸 / 電子状態 / 準古典理論 / アンデレーエフ束縛状態 / 走査型トンネル分光 / アイレンバーガー方程式 |
Research Abstract |
前年度までに得られた電子状態に対する運動方程式の解析解を用いて現実の系に即したバンド構造の異方性を入れた電子状態の理論を構築した。具体的にはボロカーバイド超伝導体YNi2B2Cのバンド構造計算の結果(Yamauchi, et. al. 2004)を取り込んで渦糸まわりの状態密度を計算し、走査型トンネル分光、顕微鏡で得られた実験結果(Nishimori 2004)との比較を行った。その際に実験結果から超伝導ギャップに異方性を決定知る方法を次のように提案した。すなわち、渦糸周りの電子状態から、フェルミ面のうち、ノードから離れたい場所での超伝導ギャップの構造が決定され、磁場回転熱伝導度の実験からフェルミ面上のノードの位置を推定することができる。すなわち第一原理計算によって得られたバンド構造と渦糸周りの局所的な電子状態を測定できる走査型トンネル顕微鏡、分光装置と、磁場回転熱伝導度のデータを相補的に活用することで、超伝導ギャップの異方性を決定することができる。その際にわれわれが得た渦糸まわりの電子状態の解析解は有効である。またわれわれの解析的理論を援用して、分数渦度をもつ超伝導渦糸まわりのアンドレーエフ束縛状態の性質を用いて調べ、物質の個性によらず、秩序変数の多価性だけから束縛状態の数が決まる普遍的な性質があることを見出した。また分数渦の周りの電子状態は著しく異方的であり、局所状態密度の観測から分数渦が同定できる可能性があることを指摘した。われわれの結果は秩序変数の異方性を取り入れた分数量子渦の電子状態の理論の基礎となり、異方的超伝導体で実現しうる分数量子渦を今後実験的に検証する上で役立つと期待される。
|
Research Products
(7 results)