2007 Fiscal Year Annual Research Report
新規有機超伝導体における「電荷秩序相」と「超伝導相」の競合と共存状態の解明
Project/Area Number |
17540315
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 初果 The University of Tokyo, 物性研究所, 准教授 (00334342)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 一志 東京大学, 物性研究所, 助教 (60342953)
|
Keywords | 強相関電子系 / 有機導体 / 超伝導材料・素子 / 分子性固体 / 磁性 |
Research Abstract |
新規有機超伝導体β-(meso-DMBEDT-TTF)2PF6の常圧および圧力下における詳細な抵抗および磁気抵抗測定により、電荷秩序と超伝導の関係を明らかにした β-(meso-DMBEDT-TTF)2PF6は、常圧下90Kで常磁性金属相から常磁性絶縁相(電荷秩序相)に相転移し、圧力印加と共に転移温度が低下して、3kbarの常伝導状態では、電荷秩序に伴う抵抗の異常を残しながら、より低温の4.3K付近で小さな抵抗ドロップが観測され、4kbarで4.3Kのゼロ抵抗の超伝導相へ突入していることがこれまで報告されている。19年度は、常圧、および圧力下における電気抵抗および磁気抵抗測定の詳細な測定により、電荷秩序と超伝導の関係を調べることを目的とした。 具体的な成果は以下に示す。 (1)電気抵抗測定用圧力セルの立ち上げと同時モニターによる圧力精度の確認 _Quantum Design社のPPMS装置で、常圧および圧力下の磁気抵抗測定(0-9T,2-400K,1bar-40 kbar)ができるよう、NiCrAl合金内装のBe-Cu製圧力セルを新規に整えた。また、測定圧力を低温圧力下で同時モニターできるよう、鉛線を同時に導入し、圧力が±0.1kbarで精度を持つことを鉛の超伝導転移温度で確認した。 (2)詳細な圧力下電気抵抗および磁気抵抗測定による超伝導相の決定 詳細な圧力下の電気抵抗測定を行ったところ、0.6kbar下、4.6Kで抵抗ドロップを確認し、磁場で転移が抑えられることから超伝導であることを確認した。さらに、圧力を印加したところ、5.2kbar下、2.6Kまで広範に超伝導相が広がっていることを確認した。 (3)磁気抵抗の温度依存性および磁場依存性による電荷秩序相の決定 β-(meso-DMBEDT-TTF)2PF6は特徴的な電気抵抗の温度依存性の振る舞いを示し、たとえば0.6kbar下においては、60K付近で抵抗最小値をもち、温度低下とともに約8倍上昇して、4.6Kで抵抗ドロップを示す。この圧力下50K-8Kの抵抗が上昇する温度範囲でラマン分光により電荷秩序の存在が示唆されているが、この範囲において、大きな磁気抵抗が観測される。この磁気抵抗増加率(ΔR/R(OT))は圧力とともに増加して、温度低下とともに電気抵抗が減少する金属相でも観測される。このように、広い圧力範囲で静的および動的電荷秩序相が存在し、超伝導相と隣接することが圧力-温度相図により明らかとなった。 以上のように、本課題で、電荷秩序相と超伝導相は隣接し、お互い競合することが明らかとなった。分子性超伝導体でこのような隣接、競合を実験的に示したのは初めてであり、意義深い。
|
Research Products
(29 results)