2006 Fiscal Year Annual Research Report
コバルト酸化物における多元要素の量子多体効果が導く異常物性と新奇超伝導機構の理論
Project/Area Number |
17540317
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大野 義章 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40221832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥西 功一 新潟大学, 自然科学系, 助手 (30332646)
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Keywords | コバルト酸化物 / 超伝導 / スレーブボソン / d-p模型 / ペアトランスファー / 多軌道 / 超伝導転移温度 / 超伝導ギャップ |
Research Abstract |
Na_xCoO_2・yH_2Oにおける超伝導の発見以来、その対称性については様々な可能性が特に理論的に議論されてきたが、ナイトシフトや不純物効果の実験によれば一重項s波の可能性が高いと考えられる。本研究では、この系の超伝導を、Coのd軌道5個とCo面の上下の酸素面にあるp軌道それぞれ3個の合計11個の軌道を含む2次元三角格子llバンドd-p模型に基づいて調べる。軌道内のクーロン相互作用U、軌道間のクーロン相互作用U'、フント則結合Jによる電子相関効果を、絶対零度ではGutzwiller近似に相当するKotliar-Ruckensteinのスレーブボソン法を用いて考慮し、Na_xCoO_2では電子相関効果によってE_gバンドは押し下げられ6個のホールポケットは消失し、A_<lg>バンドの大きなホールフェルミ面のみ残ること、また、H_2Oが挿入されるとCo面と酸素面の間隔が縮まりtrigonal歪みが増大することにより、E_gバンドが押し上げられ6個のホールポケットが出現することを示した。さらに、クーロン相互作用の軌道間ペアトランスファー項J'を考慮に入れ、超伝導のギャップ方程式を導いた。A_<lg>バンドのつくる大きなフェルミ面に加えてE_gバンドのホールポケットが現れるとき、AlgとEgのギャップ関数が逆符号となる一重項s波の超伝導が実現する。これは、電子一格子相互作用により導いた一重項s波超伝導とは、軌道間のギャップ関数の符号が異なる。x〜0.6からx〜1.0にかけて非常に大きなギャップ、及び転移温度が見られるが、実際にはこの領域では面内強磁性の効果で超伝導は実現しないと考えられる。以上の結果は、ごく最近の転移温度の同位体置換効果がほとんど無いという実験ともコンシステントである。
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Research Products
(8 results)