Research Abstract |
本年度は,(1)結晶構造に反転対称性をもたないCeIrSi_3の圧力誘起超伝導の発見とその参照物質であるLaIrSi_3のドハース・ファンアルフェン(dHvA)効果によるフェルミ面の研究と,(2)反強磁性体CeTl_3,の加圧下でのdHvA効果による電子状態の変化について研究をおこなった. ネール温度T_N=5Kの反強磁性体CeIrSi_3において1.6GPa以上の圧力下で超伝導が発現し始め,T_Nが消失する量子臨界点近傍の2.5GPaで超伝導転移温度がT_<sc>=1.6Kの最大値をもつことを見出した.また,上部臨界磁場H_<c2>は,非常に大きく,(001)面内で約10T,(001)面に垂直な方向では30Tを超えるような,異常に大きな値となることを見出した.また,CeIrSi_3の電子状態を解明するために,参照系であるLaIrSi_3のdHvA効果の実験を行った。これらの系では[001]方向に関して反転対称性が破れており,この反転対称性の欠如を反映したRashba型と呼ばれるスピン・軌道相互作用が有効磁場として電子に働く。そのためスピン状態に応じてフェルミ面が分裂する。本研究では,dHvA効果で分裂したフェルミ面を観測し,スピン・軌道相互作用の大きさを見積もった。その値は約1000Kと超伝導ギャップにくらべ3桁大きく,理論的に議論されているように,単純なs波やp波で分類されるような超伝導ではないことが示唆される. CeTl_3は,圧力誘起超伝導体CeIn_3と同じ,AuCu_3構造の立方晶の結晶構造をもち,ネール温度T_N=4Kで反強磁性を示す。CeTl_3の常圧のフェルミ面はCeIn_3や参照系であるLaIn_3とよく似ており,Ceの4f電子が局在していると理解出来る.本研究では,加圧下の実験を行い,加圧とともにフェルミ面の大きさは変化しないが,伝導電子の有効質量が加圧とともに増大することを見出した.
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