2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17540334
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
溝口 憲治 首都大学東京, 大学院理工学研究科, 教授 (40087101)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 浩一 首都大学東京, 大学院理工学研究科, 助手 (90187047)
|
Keywords | DNA / 自己組織化 / キャリアドーピング / 2価金属イオン / ESR / 1d磁性鎖 |
Research Abstract |
本年度は、電荷担体導入を目的とした2価金属イオンを導入したDNAの物性を主に調べた。概要を以下に整理する。 2価金属イオンをドープしたDNAの物性 天然のDNAは、自由に電気が流れる金属ではなく、エネルギーギャップを持つ半導体と結論してきた。そこで、電気を運ぶ電荷担体を導入するための一つの方法として、金属イオンをDNAに導入し、その電子状態を調べた。 その結果、Mgから始まる2価の金属元素のほとんどがDNAに導入できることを確認した。さらに、金属イオンのDNA内の位置は、J.Lee氏らの報告によると、DNAを構成する2本の骨格を結んでいるグアニン、シトシン、アデニン、チミンの4種の塩基からなる塩基対の間に入ることが示唆されている。磁性をプローブとするため、Mnを入れたMn-DNAの磁化率、ESRを測定した結果、J.Lee氏らの報告と同様に、塩基対間に位置することが結論された。一方で、2価イオンと塩基間には電荷移動が無いことが確認された。この結論は、Rakitin氏らが報告してる結論とは一致せず、問題点を含むことを指摘してきた。 本年度は、Mn-DNAとFe-DNAに着目してさらに実験解析を進めた。 Mn-DNAは、湿度条件により、そのESR線形が大きく変化することを見出した。すなわち、高湿度条件では、ガウシアンとローレンツィアンの中間の線形を示した。これは,1次元的な交換相互作用の相関関数による双極子相互作用の先鋭化で説明できることを示した。一方、真空中などの乾燥条件下では、ローレンツィアンで線形が再現される。これらの振る舞いは、MnをドープしたDNAであっても湿度条件により、B-フォームとA-フォームの間の構造相転移が起こることを示していると理解出来ることが分かった。すなわち、MnイオンがB-フォームの水素結合の位置にはいると、ほぼ1次元鎖を形作り、隣接鎖内のMnイオンとの距離が約2nmと鎖内のMnイオン間距離より1桁近く大きいことによる。A-フォームでは、水素結合の位置が2重螺旋の外側に配置するため、Mnイオン間距離は平均的に3次元的ネットワークを形作ることが分かる。この点は、低温比熱が約0.4Kにピークを持ち、何らかの磁気的秩序を取っていることとも一致する。Mnイオンの位置に関連して、合成のpoly(dA)とpoly(dc)の水溶液にMnCl2水溶液を混合することにより、2重螺旋が作られることも確認できた。これは、自由な2価金属イオンが生体内に存在すると遺伝情報が強く見出される可能性を示唆している。 Fe-DNAに付いては、これまで、全ての2価金属イオンを導入しても、M-DNAとしてはやはりM2+の状態を保っていることから、塩基対への電荷移動が起こらなかったが、始めてFe-DNAで電荷移動が確認できた。これにより、Feのドーピングにより、電荷担体を導入できる可能性を示した。
|
Research Products
(3 results)