2005 Fiscal Year Annual Research Report
拡張アンサンブル法の展開とフラストレート系への応用
Project/Area Number |
17540348
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福島 孝治 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (80282606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊庭 幸人 情報・システム研究機構統計数理研究所, 予測制御研究系, 助教授 (30213200)
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Keywords | 拡張アンサンブル / モンテカルロ法 / フラストレーション / スピングラス / 交換法 / 臨界現象 / 力学系 / カオス |
Research Abstract |
(1)三次元ハイゼンベルグスピングラスの拡張アンサンブル法による大規模計算(福島) 上記模型の臨界現象においては,特にスピングラス相の有無に関する議論が近年活発されているが、我々は交換モンテカルロ法を用いた大規模計算を行い,スピングラス秩序を伴わないカイラルグラス秩序化が有限温度起こることを示す結果を得た.この結論は近年指摘されていることとは異なるが,我々はその差異の原因として,この模型特有のクロスオーバーが起こる空間(時間)スケールの存在を指摘し,数値計算によりその大きさを見積もった.これらの結果はPhysical Reviewに論文として発表されている. (2)珍しい現象への拡張アンサンブルと力学系の不安定軌道の抽出(伊庭) 伊庭は「珍しい現象(rare event)」の拡張アンサンブル法によるサンプリングについて研究を行った.特に,レプリカ交換モンテカルロ法によりカオス力学系の初期値をサンプルすることにより,カオス・サドルとそこからのescape rateなどカオス系の過渡現象を効率的に探査できることを示した.また,非平衡系を含む各種の問題への拡張アンサンブル法の応用について考察し,いくつかの新しい着想を得ることができた.これらの結果の一部は,物性研究および平成17年11月第5回東工大数理科学フォーラムで発表された. (3)三次元イジングスピングラス模型の臨界現象におけるスケール変数(福島) 上記問題はフラストレート磁性体の最も基本的な模型であるが,その相転移の様子や低温相には不明なことが多い.本研究では特に臨界現象に焦点を絞り,交換モンテカルロ法による大規模計算を行った.これまで,本来普遍的である臨界指数が物理量に依存し,異なる値が評価されてきたが,我々の計算結果を元に新しいスケール変数を考慮することでその問題がほぼ解消され,普遍的な臨界指数を得ることができた.この新しいスケール変数の考え方は,実験も含めた広く一般の臨界現象に適用できる可能性があり,今後のさらなる研究が望まれる.この結果は現在論文投稿中であり,平成18年3月第61回日本物理学会年次大会で発表される.
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Research Products
(7 results)