2006 Fiscal Year Annual Research Report
拡張アンサンブル法の展開とフラストレート系への応用
Project/Area Number |
17540348
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福島 孝治 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教授 (80282606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊庭 幸人 情報・システム研究機構統計数理研究所, 予測制御研究系, 助教授 (30213200)
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Keywords | 拡張アンサンブル法 / モンテカルロ法 / 稀な事象 / スピングラス / 相転移 / リエントラント |
Research Abstract |
(a)グリフィス特異性の直接計算 ランダムスピン系には,真の長距離秩序が出現する前に特異な相が存在することがある.ランダムネスの効果で稀に存在する非常に大きなクラスターからの帯磁率の寄与が弱い特異性を与えるのである.これはグリフィス特異性と呼ばれているが,存在の稀さが理由でこれまでに数値的に直接検証されておらず,動的異常性と通じての間接的な検証が多かった.我々は今回稀なクラスターの出現頻度を制御したモンテカルロ法を考案し,10^-8程度の出現確率しかないクラスターを10^5のステップ数で実現することに成功した.結果として,帯磁率の分布を精度よく求めることができ,弱い特異性を反映した指数分布をその係数も含めて直接評価することができた.指数部の係数の温度依存性が転移温度で特異的に振る舞うことを直接観測できたのは我々が最初である.この方法は一般の稀な事象をサンプルする戦略を提示しており,今後の他分野への展開も期待できる. (b)ポッツグラス模型の相図 イジング変数を多値へ一般化したのがポッツ変数である.そのスピングラス模型については以前の研究から下部臨界次元は3以上であることが示唆されていたが,ごく最近3次元で3状態ポッツスピングラス模型でも有限温度相転移をすることが大規模数値計算から結論された.我々はその追試とさらに期待される低温側の性質を詳しく調べるために拡張アンサンブルモンテカルロ計算を行った.低温側は平均場模型で期待される1段階レプリカ対称性の破れを伴う秩序相であることを示唆する結果を得た.このことはさらなる研究が必要であるが,これまで予想されていなかった結果である.さらに,ランダムネスの変数を変えたところ、反強磁性側にのみリエントラント転移が観測できた.これは繰り込み群から予想される結果とは異なり,また最近接相互作用しかないランダム系としては初めての例かもしれない.
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Research Products
(5 results)