2007 Fiscal Year Annual Research Report
拡張アンサンブル法の展開とフラストレート系への応用
Project/Area Number |
17540348
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福島 孝治 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (80282606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊庭 幸人 情報・システム研究機構統計数理研究所, 予測制御研究系, 准教授 (30213200)
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Keywords | 物性基礎論 / 計算物理 / アルゴリズム / 統計物理 |
Research Abstract |
(1)稀な事象を効率よくサンプルするためのモンテカルロ法の応用:前年度に開発されたモンテカルロ法を用いて,稀に起こる事象が物理や統計の分野で重要な役割を果たす問題に応用を試みた.一つの例は希釈磁性体におけるグリフィス特異性の直接数値検証である.そこでは非常に小さな確率で実現する大きなクラスターからの帯磁率の寄与が特異性の原因となっている.つまり,稀に存在するクラスターをその確率を評価しながら実現させるところが困難であるが,我々の方法を用いて直接巨大なクラスターの抽出に成功し,その特異性の定量的な解析が可能になった.今後は巨大クラスターの統計的性質を議論する方向への研究の展開が期待される.全く同じ方法をスピングラスと呼ばれる問題へ直接応用することは困難であったが,別の観点からグリフィス特異性を分配関数の虚数温度のゼロ点としてとらえることができ,その数値解析を行った.物理的に意味のある特異性は実軸への接触であるが,この問題では実軸にもっとも近いゼロ点の存在自体が稀な事象となっている.ここでも我々のモンテカルロ法が強力であり,スピングラス系で初めてグリフィス相の存在を明らかにすることができた.また,情報理論の符号の問題に応用し,稀に存在する大きなビットエラーを引き起こすノイズの抽出に成功している.(2)解の個数の統計力学的数え上げ:近年の拡張アンサンブル法を用いたモンテカルロ法の一つのメリットはエントロピーや自由エネルギーの計算の精度がよいことである.我々はその特徴を生かして,非常に巨大な数の数え上げをエントロピーの計算により実現する方法を提案した.具体例として,数独のような制約充足問題の解の個数の評価を試みた.本研究ではヒントの無い数独の解の個数の評価を行った,一般のグリッド数に拡張した数独の問題では通常の9グリッド以上では厳密解はなかったが,我々は49グリッドまでの計算に成功した.
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Research Products
(12 results)