2007 Fiscal Year Annual Research Report
弾性散乱微分断面積測定による多価イオンと原子の相互作用ポテンシャルの決定
Project/Area Number |
17540373
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
伊藤 陽 Josai University, 理学部, 准教授 (10159923)
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Keywords | 原子・分子物理 / 多価イオン / 原子衝突 / 量子ビーム / 相互作用ポテンシャル |
Research Abstract |
10eV程度のエネルギー領域で,C,N,0,F,Ne原子の1価から4価イオンをHe,Ne,Arと衝突させ,実験室系でおよそ0〜30°の角度範囲で,弾性散乱および一電子移行過程の二重微分断面積を系統的に測定している.この種の測定の報告例はほとんどなく,研究開始前の予想通りとなった系と大きく異なった結果が得られた系とがあった. 予想と一致した振る舞いを示した系は,電荷移行反応が起こりえない1価イオンやその断面積が小さい系である.基底状態のポテンシャルが衝突系を支配するため,微分断面積は単調減少曲線であったり虹散乱や余剰虹散乱による特徴を示すものとなった.これらの代表的な例として,C^<2+>,F^<2+>-Heについては非経験的ポテンシャル曲線を用いた計算値と実験値の比較が進行中である. 電荷移行反応が顕著となる系として非経験ポテンシャルの知られているN^<2+>,O^<2+>-Heを例にすれば,得られた微分断面積の振る舞いは全く異なっており,相互作用ポテンシャルの異なりを正確に反映していることが判明した.これらについては衝突機構の異なりおよび全衝突断面積の違いについて,理論・実験両面からの検討を開始した. また電荷移行反応の終状態そのものについても,多くの知見が得られた.低エネルギー衝突では終状態はほとんどの場合単一であり,非常に選択性が強く,限られた範囲のポテンシャル交差点近傍で反応が起きている事が判明した.またその終状態も,N^<3+>,O^<3+>についてはそれ自身の励起を伴う反応(transfer excitation)のみが起き,いわゆる電子相関を反映した2電子過程のみが強く起きる事が初めて明らかになった. 一つ一つの衝突系毎に見られる特徴をいかに統一的に理解できるか,が今後の解析の課題となっている.
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Research Products
(1 results)