Research Abstract |
前年度に引き続き,合成シリケイトメルトの試料を用いた圧縮試験を行った.今年度は,さらに,3点支持の曲げ試験による,破壊試験も行った.実験は、研究協力者であるダニエル・リッテル教授(イスラエル・テクニオン大学)の研究室で、油圧制御式の圧縮試験器(MTS661.23B-01)を用いて行った. 前年度の結果と合わせ,ガラス転移条件をまたぐ広い温度、歪み速度の条件での実験データをそろえることができた。結果を,アメリカ地球物理学会秋季大会(2006年12月)で発表し,物質の変形と流動を記述する数学的モデルの構築を開始した. モデル構築の過程で,マグマの流動と破壊に関する既存の描像とその数学的表現に,ある矛盾のあることに気づいた.これまでのモデルは,非常に小さい歪み領域での周期的変形試験の結果と,歪み速度一定の定常状態での粘性計測の結果に基づいて作られていた.前者の結果は,線形マクスウェル粘弾性モデルでよく説明出来,後者の結果は,歪み速度の増加と共に粘性め低下する,シェアーシニングモデルで説明が出来た.しかし,両者をつなぐようなモデルがなく,マグマがだんだんと加速し,大きな歪み速度と歪みに至って破壊する,という,噴火のモデリングにおいて重要な破壊過程を矛盾無く記述することが出来なかった. マグマの変形特性を支配するミクロなメカニズムの考察と,構成方程式の数学的解析から,時間に依存する流動特性を記述するモデルを提案した.その結果を,日本火山学会秋季大会(2006年10月),および,京都大学基礎物理研究所機関誌「物性研究」で発表した. 一方,研究代表者の研究室に設置した破壊試験装置を用いた,火山弾,及び,模擬物質の破砕実験を開始した.脆性領域での岩石の破壊と,粘弾性物質の破壊過程を比較し,新しい構成方程式を用いた破砕モデルを構築していく予定である.
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