2006 Fiscal Year Annual Research Report
固液共存系の動的ぬれ特性とその力学物性への影響に関する研究
Project/Area Number |
17540393
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武井 康子 東京大学, 地震研究所, 助教授 (30323653)
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Keywords | メルト / 水 / 部分溶融岩石 / ぬれ角 / 変形 / レオロジー / 界面 / 粒界 |
Research Abstract |
水やメルトなどの流体相の存在が地殻や上部マントルのダイナミクスに与える影響を解明するためには、液相と共存する多結晶体の力学特性や輸送特性の解明が重要となる。静水圧下(静的)および差応力下(動的)での固液間のぬれ特性は、液相の存在形状への影響を通して、これらの特性に大きな影響を与える。本研究では特に未知の部分の多い動的ぬれ特性の解明を目指している。昨年度行なった実験により、差応力下ではぬれ特性が異方的に変化することが分かった(最大圧縮軸方向に法線ベクトルを持つ粒界には変化が無いが、最小圧縮応力方向に法線ベクトルを持つ粒界はぬれが促進され、粒界面積が減少する)。このようなぬれ特性の変化が媒質の弾性と粘性に与える影響を理論的に予測するため、コンティギュイティ(粒界面積とその異方性を表すテンソル量)を仮定して弾性構成則を導いた既存の理論的枠組みを拡張し、粒界拡散クリープにより変形する多結晶体の粘性構成則を導いた。同一の構造モデルに基づいて弾性と粘性の両方を導いた理論は本研究が初めてであり、ミクロな構造への敏感性が弾性より粘性のほうが遥かに大きいことや、非常に少ない(<1%)メルトの液相分率においても粘性には大きな影響があることなど、これまでに知られていなかった新しい結果が得られた。地震学的な観測データに基づいて部分溶融領域のダイナミクスを議論する際にモデルから得られた結果は、本実験で得られた結果や部分溶融岩石のクリープ実験の結果をよく説明することもわかった。実験や理論から解明された粘性の振る舞いが、マントルダイナミクスへ与える影響を予測するため、リッジの下におけるメルトの生成、分離、上昇モデルを拡張し、本研究から得られた粘性構成則を適用した。最終年度はこれを数値的手法により解き、物性とダイナミクスの関わりあいを解明することを目指す。
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