2005 Fiscal Year Annual Research Report
河川源流域から沿岸域に至る砕屑物の生産・運搬・堆積システムの解析
Project/Area Number |
17540429
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
牧野 泰彦 茨城大学, 教育学部, 教授 (00100983)
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Keywords | 安倍川 / 久慈川 / 河川堆積物 / 堆積作用 / 三保海岸 / 自然環境 |
Research Abstract |
今年度は安倍川の源流域から三保海岸の沿岸域まで砕屑物の分布状況や河床地形を観察し,礫を主とする砕屑物の粒度分析を実施した.また,これまでに実績のある海岸工学分野での研究成果を重点的に収集した.河川源流域から沿岸域まで砕屑物の運搬過程を総合的にとらえる調査は,地質学の分野では,ほとんど行われていない.しかし,海岸工学分野では,すでに,そのような問題に調査・研究が実施されている.それは,現に三保海岸で起っている海岸侵食に対する問題に緊急に対処し,その処方せんを得るために対処療法として行っているようにみえる.海岸侵食問題に対する処置は確かに必要ではある.ただし,もっとも良い方法はそのような問題を起こさないことである.自然環境をいい状態に保つために,自然環境のメカニズムを十分理解した上で,人為的な影響を必要最小限にとどめなければならない. 安倍川源流域から三保海岸までは,砕屑物を運搬していくベルトコンベアーのシステムである.これは,安倍川流域に産出する特徴的な礫(蛇紋岩)を追跡することによって判明している.三保海岸侵食の最大原因は,昭和40年ころ日本経済の高度成長期に安倍川河床から大量の砂礫を採取したことにある.これは,運搬されている砕屑物が途中で採取されたために,砕屑物の不足した部分が随時その運搬過程経路の下流方向へ移動し,現在,三保の松原付近まで到達している.つまり,この問題は自然環境に人為的な手を大きく加えたことによって生じたもので,そのシステムを理解して対応していなければ起こらなかったはずである. 自然環境の基盤をなす地形や地質は,数万年におよぶ長い年月にわたる現象である.自然現象を眺める時間スケールは,当然それに対応していなければならない.海岸侵食のような自然環境に関わる問題では,このように長期間におよぶ現象に対する自然観を持つことで回避すべきである.
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Research Products
(2 results)