Research Abstract |
本研究では,海洋コアの同一層準から産出する浮遊性有孔虫殻のAMS^<14>C年代測定と暦年代とほぼ等しいU-Th年代測定を同時に行い,その年代差から過去5万年における海洋リザーバー効果の評価をおこなうことを目的とする.試料として供される有孔虫殻は微量であるが,近年開発された多重検出器型ICP-MS(MC-ICP-MS)では,UおよびTh同位体比測定が微量かつ精密に測定でき,極めて精度の高い230Th/234U年代測定法を行うことが出来る.これを堆積速度の速い海洋コアに適応し連続的に測定を行えば,各海域における海洋リザーバー効果による経年変化の評価ができ,その補正曲線を構築することが可能になる. 本年度は,東赤道太平洋から採取されたHY-04,06,08の3本のコアを用いた.まず,浮遊性有孔虫(G.ruber)の酸素同位体比を求め,MISを確認後,堆積年代から平均堆積速度を求めた.その結果,HY-04,06,08コアにおいて,それぞれ1.9cm/kyr., 3.6cm/kyr., 0.9cm/kyr.であった.各コアとも,MIS1〜3層準において産出の多い浮遊性有孔虫(N.dutertrei)を用いて300個体(約10mg)を拾いだし,15層準をAMS^<14>C年代測定用試料とした.それらは,高真空ラインを使って酸と反応させCO2ガス化を行い,水素還元法によるグラファイトを作製した.加速器質量分析法による^<14>C年代測定を行った.また,U,Th同位体比測定のために,浮遊性有孔虫殻のクリーニングや前処理法の検証を行った.物理的,化学的処理を繰り返し行い,ICP-MSを用いて各元素の濃度測定を行い,種ごとに濃度の違いがあるかどうかチェックした.現在,殻のクリーニング法やUやThの抽出法はほぼ確立しており,来年度からMC-ICP-MS測定を行い,UとTh同位体比を測定する予定である.
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