Research Abstract |
平成18年度は,美濃・丹波・足尾帯の付加体緑色岩中とそれに伴う超苦鉄質火山岩,ロシア極東地域のオフィオライト岩体,小笠原・マリアナ前弧域の岩石について研究した.(1)西南日本内帯の美濃・丹波帯付加体中の大規模な緑色岩体は海台起源であること,(2)大規模緑色岩に伴う超苦鉄質火山岩はスーパープルーム起源の特殊な化学組成をもつこと,(3)マリアナ前弧域の海溝斜面からドレッジされたかんらん岩類は前弧・島弧・背弧を横断するマントルの多様性を示す可能性が高いこと.(4)ロシア北東部チュコートカ自治区のペクルニー山脈に分布するざくろ石変斑れい岩・超苦鉄質岩体は厚い海洋地殻の断片である可能性が高いこと,が明らかになり,裏面のような論文を国際誌に公表した. 大学院生の小泉一人と共同で行った研究により,美濃帯から丹波帯まで全延長数100kmに及ぶ基底部緑色岩の産状とその化学組成の均質性は,海洋底の巨大火成岩区である海台の付加を示唆することと(上記(1)),メランジュ中の緑色岩はN型海嶺玄武岩からなる通常の薄い海洋地殻とその上の海洋島玄武岩からなる小規模海山の付加を示唆することがわかった.足尾帯大子地域の「緑色岩」についても小泉一人・中江 訓と共同で研究したが,それは付加体形成後に貫入した岩脈であることがわかり,和文論文として報告した.また,大学院修了生の市山祐司と行った研究により,美濃帯舟伏山地域で発見したHFSEに富むピクライトや丹波帯小浜地域で発見した鉄ピクライトから,リサイクルした海洋地殻物質を含むマントル物質が5GPa程度の圧力のもとで溶融したマグマによるスーパープルーム火成作用が示唆され(上記(2)),ペルム紀海洋LIP火成作用の復元,そして日本初のスピニフェックス組織を呈する玄武岩質火山岩の発見などの成果が得られた.さらに,大学院生の柳田祐樹及び東京大学海洋研究所と行った研究により,上記(3)の成果を得た.また,小泉一人,広島大学の早坂康隆,ロシア人共同研究者と行った調査により,上記(4)の成果を得た.
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