Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芳川 雅子 京都大学, 大学院・理学研究科, 教務補佐員 (00378605)
高橋 俊郎 海洋研究開発機構, 地球内部変動研究センター, 研究推進スタッフ (20392946)
柴田 知之 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教 (40332720)
小屋口 剛博 東京大学, 地震研究所, 教授 (80178384)
鎌田 浩毅 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (80303791)
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Research Abstract |
阿蘇火山の大規模噴火を3回起こした約15万年前から9万年前の間の活動に関して,マグマの性質の変化を明らかにし,マグマ供給系の進化過程を明らかにするため,地球化学的データをもとに,マグマの成因を考察した. 阿蘇火山における大規模噴火は,大局的に珪長質および苦鉄質マグマの層状マグマ溜りからの噴火である.噴出物の化学分析の結果,以下のことが明らかになった.(1)全岩化学組成において,各大規模噴火における珪長質マグマのNi量は,苦鉄質マグマのそれと同程度かあるいは多い.(2)全岩および石基におけるSr同位体比(87Sr/86Sr)は,各大規模噴火において,苦鉄質マグマと珪長質マグマでほぼ同一である.(3)全岩および石基におけるSr同位体比は,3つの大規模噴火マグマの間で,違いはわずかであるが明瞭に区別できる.(4)大部分の斜長石斑晶のSr同位体比(微小領域分析による)は,全岩のSr同位体比と同一である. 以上の結果より,各大規模噴火におけるマグマ生成が別々の過程で起こり,各大規模噴火の珪長質および苦鉄質マグマは,同一の起源物質から生成していると考えられる.その一方で,珪長質マグマが苦鉄質マグマからの結晶分化で生じえないことがわかる.それゆえ,阿蘇火山の大規模噴火のマグマの地球化学的成因は,マグマの起源物質をハンレイ岩とし,苦鉄質マグマは,ハンレイ岩が高い溶融度で部分溶融してメルト分離し,その後結晶分化したマグマ,珪長質マグマは,ハンレイ岩が低い溶融度で部分溶融してメルト分離したマグマであるとして,解釈される.このハンレイ岩の溶融によるマグマ生成は,マントルで生じた高温マグマが上昇して下部地殻を加熱して起こった可能性が高い.苦鉄質および珪長質マグマの部分溶融度の差は,苦鉄質マグマは熱源となるマントルマグマ近傍で生成し,珪長質マグマはマントルマグマから離れた場所で熱伝導により加熱されて生成したと考えられる.
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