2005 Fiscal Year Annual Research Report
スラブメルトとマントルかんらん岩の反応機構の解明:天然の岩石と高圧実験からの制約
Project/Area Number |
17540460
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
新正 裕尚 東京経済大学, 経営学部, 助教授 (60312013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
折橋 裕二 東京大学, 地震研究所, 助手 (70313046)
安田 敦 東京大学, 地震研究所, 助教授 (70222354)
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Keywords | スラブ融解 / アダカイト / 微量元素 / 分配係数 / 高温高圧実験 / レーザーアブレーション / ICP質量分析 |
Research Abstract |
東京大学・地震研究所のピストンシリンダー型超高圧発生装置を用いてマントル最上部に相当するIGPaの条件下でカンラン石とデイサイト質メルトとの反応実験を行なった.そして実験生成物の微量元素組成を同所のレーザーアブレーションICP質量分析計(LA-ICP-MS)を用いて測定した.実験は微量元素をドープしたデイサイト質ガラスにかんらん石を加えた出発物質を用い,リキダスに近い条件下で,LA-ICP-MSで微少領域分析を行ない得る50μm径を超える斜方輝石および単斜輝石を成長させることに成功した.LA-ICP-MSでの分析により斜方輝石および単斜輝石とメルト間の分配係数をおよそ25元素について決定した.単斜輝石については,従来の多くの報告と良く一致する結果が得られた.一方,斜方輝石については軽希土類をはじめとする液相濃集元素の珪長質メルトに対する分配係数が,苦鉄質メルトより大きいという組成依存性が従来指摘されていた.今回それに反して苦鉄質メルトと差がない分配係数が得られた.またCr, Niなどの適合元素の分配係数からは,マントル・珪長質メルト間の反応で,メルトにこれらの元素は濃集しないことが予想される.上記の結果はスラブ融解で発生した珪長質メルトと,マントルかんらん岩の反応によるメルトの微量元素組成の変化を理解する上で基本的なデータになるものであり,現在投稿準備中である.また,輝石以外にマントル・メルト間の反応で重要な役割を果たすと予想される角閃石についても,同様に分配係数を決定するために,実験条件や出発物質について検討を続けている. また,スラブ融解にその成因を求めうる天然の火成岩について,文献資料や手持ち試料について検討し,次年度以降に斑晶鉱物の微小領域分析を行なうための準備を行なった.
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