2007 Fiscal Year Annual Research Report
月の「海」の年代学 〜SIMSを用いた月角礫岩の局所U-Pb年代分析〜
Project/Area Number |
17540462
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
寺田 健太郎 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 准教授 (20263668)
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Keywords | 月隕石 / U-Pb年代分析 / 局所分析 / 玄武岩 |
Research Abstract |
近年、南極氷床や砂漠などから、月を起源とする隕石が数多く発見されている。アポロ計画やルナ計画により持ち帰られた月試料が月の表側の赤道付近に限定されていたのに対し、これらの隕石は月の裏側や深部など、未探査領域からのサンプルである可能性が高く、「月全球レベルでの地殻進化」を理解する上で重要な鍵として注目されている。しかし、これらの月隕石の殆どが、起源の異なる岩石片や鉱物片の寄せ集めである多種混合角礫岩であり、更に角礫化の際の2次的な変成により生成時の放射壊変系が乱されているなど、火成活動に関する正確な年代情報を引き出すことが困難とされてきた。一方、申請者等はイオンマイクロプローブSHRIMPの高い空間分解能を駆使し、リン酸塩鉱物の局所U-Pb年代分析に取り組んできた。5〜10μmに絞った酸素イオンビームを閉鎖温度の高いリン酸塩鉱物に照射し、スパッタされた二つの放射壊変系を同時計測する我々の年代決定法は、複雑な鉱物組織と熱履歴を有する月の多種混合角礫岩の年代学的議論を可能にした。 平成19年度は、月の玄武岩質隕石MET01210,Kalahari009,Dhofar287の年代分析を行い、アポロ・ルナ試料とは全く異なる年代学的情報を得ることに成功した。中でも特筆すべきは、1999年にカラハリ砂漠で発見された、KREEP元素(カリウム、希土類元素、リン)に乏しいKalahari009隕石に記録された43.5±1.5億年前の火成活動の発見である。この結果は、従来考えられていた月の火成活動時期(約29〜39億年)を約4億年も遡るものであり、月形成直後の数億年内には月面で既に火成活動が起こっていたこと、月のマグマオーシャンの最終固結物質であるKREEP層が月全球規模では発達しなかった可能性、厚いレゴリスに覆われている知られざる太古の「海(cryptomare)」の存在、などを示唆するものであり、これまでの「月の進化モデル」の再考を促す重要な知見となった。
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Research Products
(6 results)