2006 Fiscal Year Annual Research Report
星間空間の中性分子化学反応ダイナミクスに関する理論研究
Project/Area Number |
17550007
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高柳 敏幸 埼玉大学, 理工学研究科, 助教授 (90354894)
|
Keywords | 反応ダイナミクス / 量子反応性散乱 / ポテンシャル曲面 / 星間分子 / 非断熱遷移 / 反応速度定数 |
Research Abstract |
本年度は、まず星間空間で発見されているHNCの生成機構について、反応動力学的な立場から理論研究を行った。HNCはより安定なHCN分子の異性体であるが、星間に多く見つかっており、その生成機構の解明は注目を集めている。これまで、HNCH^+イオンと電子との中和反応によってHNCが生成することが提唱されている。我々が今回注目した反応はC_2+NH反応であり、反応分子はどちらも星間分子として見つかっている。しかし、ラジカルーラジカル反応であるため、これまで全く研究例はない。本研究では、電子状態理論をトラジェクトリー計算に直接反映させる、ダイレクトダイナミクスの手法を用い、この反応が非常に効率的にHNC分子を生成することを初めて見出した。反応経路としては、C+HCNチャンネルも生成しうるが、C_2+NH反応では、まず反応中間体であるC-C-N-Hがバリヤーなしに生成し、その後異性化することなしに、直ちにC+HNCに分解することがわかった。この結果は、炭素原子と窒素原子がほぼ同じ質量をもち、かつ中間体のC-C-N構造がほぼ直線的であることに起因する。つまり、HNC分子の生成は運動量移行が効率的に起こることによる動力学的な結果であると言える。この研究結果は、星間化学反応の解明において、化学反応動力学的な手法が多大な貢献が可能であることを示した重要な例であると言える。 また、本年度は、F+HD反応を題材に、弱いファン・デル・ワールス引力相互作用が低温での反応にどのような影響を与えるかについて、厳密な量子力学的手法を用いた反応性散乱計算を行い検討した。この反応自身は星間反応としての重要度はないが、正確なファン・デル・ワールス力を考慮したポテンシャル曲面が得られている。計算の結果、角運動量による平均化を行っても、反応断面積にファン・デル・ワールス力による特異な共鳴構造を持つことを見出した。この結果は、化学反応論にとって極めて一般的で重要であることがわかった。
|
Research Products
(6 results)