2005 Fiscal Year Annual Research Report
気相クラスターの赤外分光・量子化学計算による金属イオンの溶媒和構造の解明
Project/Area Number |
17550014
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大橋 和彦 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (80213825)
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Keywords | クラスター / 金属イオン / レーザー分光 / 赤外スペクトル / 密度汎関数理論 / 溶媒和構造 / 配位構造 / クラスター内反応 |
Research Abstract |
本年度は,金属イオン/溶媒分子の組み合わせとしてAl^+/アンモニア,および,Cu^+/水を研究対象とした.まず,金属イオン-溶媒分子間の衝突反応の調査も含めて,溶媒和金属イオン源のキャラクタリゼーションを行った.引き続き,金属イオンに溶媒を1分子ずつ段階的に結合させながら,その赤外スペクトルを測定した.また,量子化学計算を行って,溶媒和金属イオンの幾何構造,赤外スペクトルを予測し,実験結果との比較を行った. 1.アンモニアのNH結合にAl^+が挿入した挿入型構造[H-Al-NH_2]^+よりも,Al^+にアンモニアがそのまま配位したアダクト型構造[Al-NH_3]^+の方が安定である.しかし,溶媒分子数を増加させると,挿入型構造の方がより大きく安定化することが理論計算により分かった.実際に,溶媒分子数がn【greater than or equal】4についての赤外スペクトルには,アダクト型構造ではなく挿入型構造を核とする[(H-Al-NH_2)(NH_3)_<n-1>]^+が支配的に観測された.しかし,n【less than or equal】3については,アダクト型構造のみが観測されたことから,挿入反応経路にはエネルギー障壁が存在すると推定した. 2.Cu^+に水が3分子溶媒和したイオンについては,3分子すべてが直接Cu^+に配位した(3+0)構造と,3分子めが既に配位している水に水素結合した(2+1)構造が提案されているが,その区別がつかなかった.そこで,最安定構造を得るためにAr原子を付加したCu^+(H_2O)_3の赤外スペクトルを測定したところ,(2+1)構造が支配的に観測された.(2+1)構造が最安定となるのは,直線型の2配位構造が極めて安定であることに起因する.溶媒分子数がn【greater than or equal】4のスペクトルも,この直線型2配位構造が核となった水和構造を考えることにより解釈できることがわかった.
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Research Products
(1 results)