2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナノメートルサイズの分子における多電子ダイナミクスの理論的研究
Project/Area Number |
17550024
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
信定 克幸 分子科学研究所, 理論分子科学研究系, 助教授 (50290896)
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Keywords | 電子ダイナミクス / 光学応答 / 量子散逸 |
Research Abstract |
分子のダイナミクスは、多原子ダイナミクスと多電子ダイナミクスの2種類のダイナミクスに大別できる。化学反応一般は多原子ダイナミクスの典型的な例であり、他方、多電子ダイナミクスの例としては、線形・非線形光学応答、電荷移行反応、分子レベルでの電気伝導などが挙げられる。しかし多電子ダイナミクスは一般的に非常に高速の過程であり、また電子相関を高い精度で取り込むことが容易ではないためその理論的研究は十分に行われていない。本研究ではナノメートルサイズの金属クラスターを対象として、超高速の実時間・実空間電子ダイナミクス(光吸収、発光、電荷移行反応等)を理論的・数値計算的に明らかにすることを目的とした。先ず、多電子ダイナミクスを記述するために、時間依存密度汎関数理論に基づく数値計算的手法の開発を行った。この計算手法の特徴は、多電子の複雑な運動を実時間・実空間領域で直接的に取り扱うことができる点であり、レーザーパルス等の外場に対する電子の線形・非線形光学応答を解析することに適している。次に電子ダイナミクスの最も典型的な例として分子レベルでの伝導性の問題を取り扱った。具体的には、リング状分子(Na_<10>及びC_6H_6)に対して円偏光レーザーパルス光を照射したときの電流発生のメカニズムとこの円電流発生に伴う磁気モーメントの誘起に関する理論的・数値計算的解明を行った。誘起電流には共鳴励起の効果が顕著に現れ、また誘起電流は電場に対する二次の非線形光学応答現象であることが分かった。上述した研究を更に発展させ、電子エネルギー散逸の効果を取り込むことを目的として、密度演算子に基づく時間依存密度汎関数理論を開発し、リュウヴィル空間における密度演算子の時間発展方程式、すなわち量子論的リュウヴィル方程式を解くための新しい数値計算手法の開発にも着手した。
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Research Products
(6 results)