Research Abstract |
これまで,(R)-BINOLより合成したキラルリン酸ジエステルが,キラルブレンステッド酸として高い不斉触媒能を有することを初めて見いだした。本研究においては,Mannich型反応以外の反応への展開を目指して,ビナフチル基の3,3'位に様々な置換基を有する触媒を合成し,他の触媒反応での触媒活性を検討した。 1,ヒドロホスホニル化反応 イミンに対する亜リン酸ジアルキルの付加反応により,α-アミノホスホン酸エステルが最高90%eeで得られることを見いだした。この反応の遷移状態についても考察した。 2,aza Diels-Alder反応の開発 イミンとDanishefsky'sジエンとのaza Diels-Alder反応が,効率良く進行し,ジヒドロピリドン誘導体が高いエナンチオ選択性で得られることをあきらかにした。添加剤として,酢酸を添加することにより,化学収率および不斉収率が大きく向上することを見いだした。 3,TADDOL由来のリン酸の開発 これまで,(R)-BINOLを不斉源として用いてリン酸を合成してきた。Mannich型反応において,高い触媒活性を示すことを見いだした。すなわち,5mol%の触媒を用いることにより,Mannich型反応が効率良く進行し,対応するβアミノエステルが,最高91%eeで得られた。 以上,「キラルブレンステッド酸を用いる不斉合成反応」という新規な領域が大きく広がる可能性を秘めていることを明らかにすることができた。さらに,他の不斉反応への応用も検討中である。
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