2005 Fiscal Year Annual Research Report
単結晶X線回折法による混合原子価金属錯体の光励起構造の解明
Project/Area Number |
17550065
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
小澤 芳樹 兵庫県立大学, 大学院・物質理学研究科, 助教授 (40204200)
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Keywords | 光励起構造 / 多核金属錯体 / 原子価互変異性 / X線構造解析 / 放射光X線回折 / 光物性 / 物性実験 / 結晶構造 |
Research Abstract |
大型放射光施設SPring-8のX線とレーザーを用いた光照射X線構造解析法による,光励起原子価互変異性錯体の光励起構造の解明は,現在実験に適した測定試料を探索中であり,Ru(II), (III)錯体および白金(II), (IV)錯体を中心に化合物の合成と結晶作成を試みている.以下の研究成果が得られた.関連する研究成果は以下の通りである. 1 銅一価ポリマー錯体[Cu_2I_2(PPh_3)_2(4,4'-bpy)]_∞では青色レーザー(442nm)照射によりCu原子を架橋している2つのI原子が互いに近づく方向に接近し,Cu(I)からCu(II)の配位環境に近づく傾向をはじめて直接観測することに成功した.この動きは,錯体の金属-配位子電荷移動遷移(MLCT)に起因していると考えられ,その吸収帯より離れた緑色のレーザ(532nm)を照射したときには,原子の動きは見られなかった.同様の構造を持つポリマーではない複核銅錯体では,この動きが分子構造全体の振動回転運動などと混ざってほとんど観測できなかったことから,ポリマーにして立体構造を固定することでよりはっきりと光励起構造が検出できることがわかった. 2 単結晶中で可逆な光異性化反応を起こすRh錯体[(Cp'Rh)_2(CH_2)_2(O_2SSO_2)] (Cp'=Me_5C_5)について室温および低温での異性化率の時間変化をX線構造解析で追跡した.室温では1種類しかできない構造異性体生成物が110Kの低温では,4種類存在することがわかった.この異性体は,110Kで光照射した結晶を光を当てずに温度を室温にすると,90%以上の異性化率を保ったまま,室温で存在する構造異性体に変化することがわかった.このことからこの化合物の光異性化生成物の,結晶内での構造異性体間での熱平衡の様子を解明することができた.
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Research Products
(3 results)