Research Abstract |
土壌中における汚染物質の除去,クロマトグラフィーの分離プロセス等を研究する上で重要な,微粒子細孔・間隙内における吸脱着過程,錯生成過程等を解明するため,本年度は顕微分光法と温度ジャンプ法を組み合わせた手法開発を目的とした。光学顕微鏡下において,単一微粒子に近赤外レーザー光1064nmを集光して短時間で温度上昇させ,分光測定用プローブ光を同じ位置に照射し,このレーザー光照射に同期させて,温度ジャンプに伴った微粒子細孔内壁化学・物理プロセスの緩和に伴うスペクトル変化を光検出器で測定できる手法を作製した。サンプルとしてODSシリカゲルに,1-アニリノナフタレン-8-スルホン酸,クマリン101の蛍光プローブ色素が溶液中で収着平衡に達したものを用いた。ナノ秒パルスNd^<3+>:YAGレーザーのパワー,スポットサイズ,レーザーパルスの繰り返し周波数,積算回数を変化させて,蛍光強度変化が観測できる条件を探索したが,1064nmの高パワーパルス光を入射すると対物レンズ近傍から発光が観測され,プローブ色素からの蛍光を妨害し,温度ジャンプの有無を確認できなかった。現在,対物レンズとその近傍の光学系を改造し,この発光を抑制することを検討している。また,時間分解能(1ms)は長くなるが,CWNd^<3+>:YVO_4レーザーの1064nm光を高速シャッターで開閉し,温度ジャンプさせることを試みた。クマリン101/ODSシリカゲル系で1064nm光の有無で蛍光強度が変化し,この緩和過程(吸着/脱着過程と予想)の観測に成功した。これが温度ジャンプに伴うことを確認するため,ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)水溶液が32℃前後で相転移する現象を利用した。3W/cm^2程度のレーザー光を照射すると10ms以内に相転移し微粒子形成が観測され,2〜3μmの領域を〜10℃温度ジャンプできることを明らかにした。
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