2005 Fiscal Year Annual Research Report
クラウン化スピロベンゾピラン誘導体ミセル溶液による金属イオン分離・定量の光制御
Project/Area Number |
17550080
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
坂本 英文 和歌山大学, システム工学部, 助教授 (10192593)
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Keywords | クラウン化スピロベンゾピラン / フォトクロミズム / スピロベンゾピラン / クラウンエーテル / ミセル / アルカリ金属イオン / 陰イオン性界面活性剤 / 臨界ミセル濃度 |
Research Abstract |
フォトクロミック部位であるスピロベンゾピランにクラウンエーテル部位とオクタデシル基を備えたクラウン化スピロベンゾピラン誘導体を、陰イオン性界面活性剤であるドデシル硫酸イオンから成るミセルに溶解させた溶液について、金属イオン添加時の蛍光スペクトル変化を調べた。その結果、塩基性条件下ではモノアザ-12-クラウン-4部位を持つものでリチウムイオン添加時に顕著な蛍光の増感が認められた。これは、塩基性条件下でクラウン環の窒素原子からメロシアニン部位への光誘起電子移動(PET)が、金属イオンとクラウン部位との錯形成により抑制されるためと考えられる。モノアザ-15-クラウン-5、-18-クラウン-6を持つものでも、アルカリ金属イオンについて同様の検討を行ったところ、やはりクラウンエーテル部位と最も錯形成能が高いナトリウムとカリウムイオンをそれぞれ加えた場合に最大の蛍光強度を示した。一方で、クラウンエーテル部位の大ぎさに関わらず、いずれのクラウン化スピロベンゾピラン誘導体においても、最も電荷密度の高いリチウムイオンを添加した場合に蛍光の増感が認められた。この結果は、メロシアニン体のフェノラートイオンとリチウムイオンとの強い相互作用に加えて、クラウンエーテル部位の窒素原子とリチウムイオンとの錯形成によるPETの抑制に起因することを示唆している。 また、陰イオン性界面活性剤とクラウン化スピロベンゾピラン誘導体より成るミセル溶液では、可視光照射によりその臨界ミセル濃度(cmc)が低下すると共に、アセチルサリチル酸などの芳香族化合物の溶解性も低下することを見出した。これは、クラウン化スピロベンゾピラン誘導体の双性イオンであるメロシアニン体から電気的に中性なスピロピラン体への異性化に伴う、陰イオン性界面活性剤ミセル界面における存在状態の変化によるものと考えられる。
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Research Products
(3 results)