Research Abstract |
中央大学・理工学部校舎(後楽園)で、粒径別(<2μm,2-11μm,>11μm)に大気粉塵(以下APMと略す)を1ヶ月ごとにサンプリングし、APM中の主成分元素(Na,Mg,Al,Ca,Fe,Kの6元素)をICP発光分析法で測定し、微量元素(Li,Be,Ti,V,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,As,Se,Mo,Cd,Sb,Ba,Pbの17元素)をICP質量分析法によって測定した。 過去11年間の長期モニタリングの結果より、<2μm以下の小さな粒径のAPM中に有害汚染元素(Sb,Cd,Se,Pb,As)が多く濃縮していることが明らかとなった。特に、Sbは最も多く濃縮していた元素である。Sbの起源として可能性のある物質中のSb濃度を測定しその起源を考察したところ、自動車のブレーキパッド、化学繊維、プラスチックなどに高濃度のSbが検出された。 季節変化としては、大きな粒子中に多く含まれる主成分元素は夏に高く冬に低いという傾向があるのに対し、小さな粒子中に濃縮している多くの微量元素は、逆に、冬に高く夏に低いという季節変化を示した。夏に高く冬に低いという季節変化は、日照時間や風速と大きく関連しており、一方、冬に高く夏に低いという季節変化は、降水量と大きく関係している。 粒径ごとにサンプリングした大気粉塵を水で抽出すると、2μm以下の小さな粒径のCd,As,Pb,Vなどはその50%以上が抽出されることが明らかとなった。今後、それらの可溶性元素がどのような化学形態で存在するのかを明らかにして、ヒトへの健康影響について考察する予定である。
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