Research Abstract |
研究目的で示したようにBINAPは優れた不斉誘起能を有する代表的なキラル配位子であるが,BINAPの誘導化に伴う応用的研究はほとんど行われていない.これは,BINAPの誘導化の鍵化合物であるヨウ素化BINAPの合成法が見出されていなかったことによる.申請者は本年度(2005年)の成果として,はじめてBINAPの5,5'-位にヨウ素を導入する簡便な合成法を見出した.具体的には,BINAPの酸化体であるBINAPジオキシドをビスピリジンヨードニウムテトラフルオロボレート(IPy_2BF_4)で処理し92%の高収率で5,5'-ジヨードBINAPジオキシドを得た.また17年度の研究計画に示していたように,5,5'-ジヨードBINAPジオキシドと遷移金属触媒を用いる種々のクロスカップリング反応を行った.その結果Sonogashiraカップリング反応では,トリメチルシリル基が導入された5,5'-ビス(トリメチルシリルエチニル)BINAPジオキシドを86%収率で得,続く還元により82%で5,5'-ビス(トリメチルシリルエチニル)BINAPおよびその脱トリメチルシリル体を得た.一方,鈴木カップリング反応もスムーズに進行し,BINAP-ジオキシドの5,5'-位にフェニル基,3,4-ジメトキシフェニル基および3,5-ジフルオロフェニル基をそれぞれ,82%,89%,89%の高収率で導入することに成功した.さらに,アクリル酸エチルとのMizoroki-Heck反応を行ったところ,これも82%で目的のBINAPアクリル酸誘導体を得た.本年度の研究計画を更に発展させ,パラジウム触媒を用いる一酸化炭素存在下でのカルボメトキシ化反応を行ったところ,これも91%の高収率で目的の生成物を得た.これらは,いずれもトリクロロシランによる還元を行った後,ロジウム触媒を用いるシクロヘキセノンへのフェニルボロンの不斉1,4付加反応のための配位子として用いたところ,5,5'-ジエチニルBINAPでは反応が進行しなかったものの,他のBINAP誘導体では97%eeの高エナンチオ選択制で目的の1,4付加体を得た.
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