2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17550139
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
枝元 一之 立教大学, 理学部, 教授 (80185123)
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Keywords | 表面・界面物性 / 超薄膜 / 触媒 / 亜酸化物 |
Research Abstract |
超高真空仕様のTi蒸着装置を試作し、それを用いてAg(100)表面でのTi酸化物薄膜合成の研究を行った。 予備実験として、Ag(100)表面を室温で酸素に露出し、50,000L露出しても表面の酸化が進行しないことを確認した。さらに、超高真空下でAg(100)表面にTiを蒸着する実験を行い、この系においては合金化が進行せず、表面上にTi薄膜がlayer-by-layer成長することを見出した。 表面上にTi酸化物薄膜を形成するため、10^<-5>〜10^<-7> Torrの酸素雰囲気下で室温のAg(100)表面上にTiを蒸着した。薄膜の成長過程、組成についてオージェ電子分光(AES)を用いてモニターし、その結果この酸素圧力下においては、酸素導入圧、Ti蒸着量によらず常に一定の組成のTi酸化物が形成されていることを見出した。AESスペクトルの解析より、得られたTi酸化物におけるTiの酸化状態は+1.2〜+1.5と見積もられた。得られたTi酸化物薄膜をさらに酸素に露出しても酸化の進行は観測されず、化学的に安定な酸化物が得られたことが分かった。 次に、10^<-6> Torrの酸素雰囲気下で、基板温度を変化させてTiを蒸着し、基板温度の関数として酸化物薄膜の成長様式の変化を見る実験を行った。その結果、室温から600℃の間では、基板温度を変えても表面上に成長するTi酸化物薄膜の組成は変わらないことが分かった。ただし、低速電子回折(LEED)測定を行った結果、室温で作成したTi酸化物薄膜は回折像を与えず、無秩序な構造を持っているのに対し、400℃以上に保った基板表面でTi酸化物薄膜を作成した場合は明瞭な(1×1)LEEDパターンが観測され、Ag(100)表面の原子配列の対称性を反映した規則的な原子配列を持つTi酸化物がエピタキシャル成長していることを見出した。よって、組成の点では基板温度による変化は見られないものの、薄膜の原子配列は基板温度により大きく変わることが分かった。一方、室温で10^<-6> Torrの酸素雰囲気下で成長させた薄膜を、600℃で加熱すると、組成に変化は見られないもののLEEDパターンは(5×1)に変化し、(1×1)酸化物薄膜とは異なる周期構造を持ったTi酸化物薄膜が得られた。 今後、Ag(100)表面上において新たに合成した上記の興味深い酸化物薄膜に対し、X線光電子分光(XPS)測定を行い、酸化物薄膜中におけるTiの化学状態を決定する実験を行う予定である。
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