2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17550139
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
枝元 一之 立教大学, 理学部, 教授 (80185123)
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Keywords | 表面・界面物性 / 超薄膜 / 触媒 / 亜酸化物 |
Research Abstract |
TiOは高融点、高硬度でかつ金属的伝導性を持つことが予想され、物性的に興味深い物質である。しかし、大気圧下では不安定で容易に酸化されるため、単結晶は未だ得られておらず、そのため電子状態、物性、反応性は未知の状態にある。本研究は、格子定数の似たAg(10o)基板上に酸素雰囲気下でTiを蒸着させることにより、TiO単結晶薄膜を作成することを目指したものである。 5.0×10^<-9>〜1.0×10^<-8> Torrの酸素を導入しつつTiをAg(100)面上に蒸着し、その後400-600℃でアニール処理をすると、鋭い(1×1)LEEDパターンを示すTi酸化物薄膜が得られた。x線光電子分光(xPs)による測定の結果、Ti 2pの内殻ピークはTiが2+の状態にあることを示し、さらにTi 2pと0 1sピークの強度比の解析より薄膜の組成はO/Tiがほぼ1であることがわかった。以上の結果より、Ag(100)表面上にTiO(100)薄膜をエピタキシャル的に形成することに成功したと考えている。紫外光電子分光(UPS)の測定の結果、薄膜はフェルミ準位近傍にバンドを持つことが見出された。これは、TiO結晶に対して理論的に予想されている部分的に占有されたTi 3dバンドに帰属でき、予想通りTiOは金属的伝導性を持つ可能性が高い。 1.0×10^<-6> Torr以上の酸素雰囲気下でTiをAg(100)上に蒸着し、その後400-600℃でアニール処理をした場合、(5×1)LEEDパターンを示すTi酸化物薄膜が得られた。XPS測定の結果、薄膜におけるTiは4+の状態にあり、また組成はO/Tiがほぼ2であることがわかった。したがって、1.0×10^<-6> Torr以上の酸素圧で作成した場合、TiO_2薄膜が形成されると結論できる。UPS測定の結果、スペクトルは従来より数多く報告されているTiO_2のスペクトルと一致した。(5×1)TiO_2酸化物の構造については今のところ未知である。TiO_2がルチル型結晶となった場合、格子定数a、cはそれぞれ(銀の結晶における再隣接距離をrとして)5r/3、rに近いため、現在のところ下地Ag(100)と整合して少しひずんだルチル型結晶薄膜が形成されているのではないかと予想している。 今後、STM測定等により、Ti酸化物薄膜の構造をより詳しく研究する予定である。また、角度分解光電子分光測定により、TiO薄膜の電子状態を解明することを目指している。
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Research Products
(1 results)