2006 Fiscal Year Annual Research Report
原子論的シミュレーションによる表面ナノ構造の形成過程と力学的特性の研究
Project/Area Number |
17560066
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
新谷 一人 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (00162793)
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Keywords | 表面ナノ構造 / ナノ材料 / クラスター / バイメタル / 巨大磁気抵抗 / 多層膜 / 界面粗さ / インターミキシング |
Research Abstract |
1.クラスターの合体は自由クラスターの成長過程のひとつであるが、この合体過程を利用して2種類の金属クラスターからバイメタルクラスター(合金クラスターやコアシェル型クラスター)を作製することが考えられる。本年度は、AuクラスターとCuクラスターの合体過程の分子動力学シミュレーションを行った。その結果、AuクラスターとCuクラスターの合体過程は、表面の滅少による温度の上昇、Au原子によるCuクラスター表面の被覆、内部におけるAu原子とCu原子の相互拡散の3段階を経て進行すること、直径3nm以下の小さなクラスター同士の合体では、内部の相互拡散による自発的合金化が起こること、直径が5nm以上の大きなクラスター同士の合体では、Cuクラスターの構造が合体後も維持され、Au原子とCu原子の相互拡散も起こらず、コアシェル型のクラスターが得られる可能性があることを明らかにした。 一方、クラスター堆積による薄膜作製では、自由クラスターの特徴を維持したまま堆積させることにより、新たな特性を有する薄膜を作ることが考えられる。Ar雰囲気申のCuクラスターをCu基板へ堆積させるシミュレーションを行い、Ar雰囲気が堆積後のCuクラスターのモルフォロジーに与える影響を調べた。その結果、基板温度300KにおいてCuクラスターは基板と同一の結晶構造に再構成されること、Ar雰囲気によってCuクラスターの運動エネルギーは減少し、基板上にソフトランディングした後に構造変化が起こることが分った。 2.磁性層と非磁性層を交互に積層させた金属多層膜では巨大磁気抵抗(giant magnetoresistance : GMR)効果が現れ、ハードディスクの読み取りヘッド用磁場センサーなどに応用される。巨大磁気抵抗効果発現のためには高品質な多層膜の形成が必要である。本年度は、分子動力学法によって、Co/Cu/Co金属多層膜の形成シミュレーションを行った。初期構造としてCo(0001)基板を作製し、実験に対応した速度を有するCu原子6MLとCo原子6MLを蒸着させた。速度は基板に対して鉛直方向に与えた。界面粗さとインターミキシングを計算し、多層膜の評価を行った。その結果、Co基板(0001)上にCu島の2次元成長が起こること、蒸着原子に与えられる入射エネルギーが高いほど表面が平滑化されること、入射エネルギーを変化させずに蒸着させる場合、1、5、10eVの中では中間の5eVで最も良好な界面が得られること、界面粗さとインターミキシングの両方を最小化するようなCu原子とCo原子の入射エネルギーの組み合わせが存在することが明らかとなった。
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Research Products
(9 results)